
レモンの皮を使いたかったのでデパ地下の自然食品屋へ行った。完全無農薬ノーワックス高知産\165税込。高いと思ったがほかの選択肢は見当たらないので思い切ってレジに行ってびっくり。\465の見間違いだったのだ。厚いしっかりした皮から霧のように飛び散るオイルの素晴らしい香り。十数年ぶりにレモンティーもつくった。砂糖漬けもおいしい。これはスーパーのレモンとは別のものだ。また買おう。

酒が好きというよりはちょっとおいしいあてがあってこその酒。新子の握り、4枚付け。いつでも出会えるものではないし、どこの鮨屋にでもあるというわけではない。幸せな時間。

食事をしながらテレビの習慣はないしNHKは今でも嫌いなので朝ドラは完璧に遠ざけていたのだが「あまちゃん」のおかげでなじみができてしまった。母との2人暮らしのなかでの数少ない共有できる番組でもある。今期の「ひよっこ」は私が育ってきたころの時代までは辛うじて残っていた人や街や里山などのぬくもりのようなものが細やかに描かれていて、惰性の域を超えて楽しんでいる。ヒロインのみね子の思いに恋という名がついたところで時間となって、次の番組の有働さんの恋心に心地よくつながっていった日にはこちらまであたたかくなって、自然に「65歳以上の栄養失調」に引きづり込まれてしまった。そこでは聞き捨てならないことが語られていて、曰く、総コレステロール値(基準値140〜199)は180〜250が理想、肉をもっと食べないと先は長くない、というのだ。で、いろいろ考えた挙句、山珍居でラオーバ(老肉)。これまで100回をはるかに超すランチで一度も食べたことがなかった。脂身いっぱいのとろとろ三枚肉はおいしかった。私とは違うとは思うけれど隣の卓の若い女性二人も私と同じメニューだった。

中川エリカさん設計の熱海「桃山ハウス」。30歳下の後輩の話題の住宅を北山さん谷内田さんと3人で見学した。素朴な疑問があちこちに散らばっていて、それらはどうでもいいことなのだということは理解できるのだが、では主題はなにかというのは私にはやはり見えなくて、みなと同じようにつまらない質問をした。今の「建築」はそういうものを超えているのだろう。乾さんの住宅建築賞の総評での「希望のある住宅」という表現は実に巧みで「精神の開放を求める意志」と解き明かされて納得できたような気もする。乾さんの確信には感心する。あの場を体験した小一時間に特に印象的だったのは周囲の樹々に棲むさまざな鳥の囀りだ。それほどにのびやかな空間だということだろう。駅前の居酒屋での酒宴にも澱みはなかった。

comma佐野ももさん設計の「隙間の家」。設計の途中で「新たな防火規制区域」の制限が加わったハンディを逆手にとった不思議な木造耐火住宅。外壁耐火の白い壁とそのほかの軸組小屋組が併存していることによって生じる外壁周りの隙間がテーマになっている。閉鎖的な外壁に開けられた2つの大きな縁側開口が住宅街の4m道路に直面しているところが興味深い。斜め向かいにある完全に閉じた平屋住宅に触発された結果ではないとのこと。木造で耐火がかかると面白くないという常識は怠け者の言い訳に過ぎないということがわかった。

アルテック阿部勤さん設計の集合住宅las casasの大家さん宅が空いたのをfbで知ってギャラリー「ときの忘れもの」がタイミングよく移転してきためでたくお披露目。縦長の小さな窓の繰り返しが印象的な外観。3階の壁に囲われた屋上テラスが好き。もともと住宅だった空間には細長い吹き抜けもあってギャラリーにぴったり。