
市川市の冨貴島小学校に通っていた頃の遠足で来て以来の養老渓谷。おそらく4年生くらいだったはずだから56年ぶり。房総半島横断鉄道の旅の途中下車を養老渓谷駅一つにしぼって3時間の探索時間を捻出して渓谷を歩いた。上総地方では蛇行する川を短絡させて農地を開拓する「川廻し」がかつてさかんだったそうだが、昭和初期以降の養老川の川廻しの名残の細長い沼あたりの景観はよかった。出世観音の見苦しい商業主義が仇となったのか、温泉エリアに点在する宿泊施設のいくつかは休業していて、観光地としてさみしい雰囲気が漂っている。景観を破壊するような建物をつくらず渓谷の自然を生かす知恵があればこうはならなかっただろう。

鵜原へは外房線の便がいいのだが、この機会に房総半島横断鉄道の旅にトライしてみることにした。五井から小湊鐵道。全社一丸となってローカル線の楽しさをインターナショナルにしようとトライしていて全線話題満載。努力が功を奏しているらしくみんながいきいきとしている。この日は座れない人もいた。駅舎、車輌、標識などの古さを巧みに保全しているのは賢い。「小湊」はかつて安房小湊を目指して敷設された名残だそう。


7月16日、鵜原ビーチハウスの竣工宴。外房勝浦の少し先にある美しい浜に直面した敷地に二軒家アパートメンツ仲間のジュリアン一家が何年もかかってやっと家を完成させた。オーストラリアの彼と日本の彼女、Japanese wifeは国際的に定評が高くAustralian husbandも家庭的なことで知られているから最高の組み合わせなのかもしれない。土地を見つけ出したのは彼の弟さんで奥様はやはり日本人。パーティーにはほかに何組も同様な組み合わせのカップルがいた。優しい日本語を話す大男がいっぱい。お国からかけつけた母上が矍鑠としていて計画の首謀者だったことがよくわかる。息子たちのともだちがたくさんお祝いに駆けつけ、孫たちが浜辺を走り回る。彼女の夢が実現したうれしい日。幸せいっぱいの時間を共有させていただいてこちらまで幸せに。しかし私たちの文化のなかでは「いい海水浴場のひとつ」でしかない場所に新たな価値を見出したのが遠く海の向こうの人たちだというのは皮肉だ。設計はJulian Worrall Spaces+2.5 architects。構造は桃山ハウスと同じStructured Environment。機能に素直な形が、お世辞にも美しいとは言えない街並みに、自然に溶け込んでいた。鵜原の未来にとっても大きな一歩かもしれない。これで4日連続の美宴。楽しく飲めばからだは応えてくれると思い込んではいけないのだろうな。
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7月15日、38年前に竣工した事実上の処女作[bigdog house]に息子と娘がやってきてちょっとしたお祝いの宴。90歳近い母はこの暑さで参っているので他の場所でやるべきかとも思ったのですが、得るものの方が大きいだろうと、思い切りました。久しぶりの3世代の縁は楽しかったですね。子供たちの成長がうれしい。初めて設計した奥行きが80pのキッチンカウンターと直交するダイニングテーブルは意外に機能的で、包丁片手にいろんなメニューを思いつきながら、流れに合わせてテーブルを仕切っていくのは楽しい。細かいことをするには手がおぼつかないので、超大判の白い角皿にハランを敷いたりしてつまみを置いていく。鮨屋みたいなものですね。酒もあても無限にあるので、どうしても飲み過ぎてしまって翌朝の早起きは辛かったですね。

7月14日、私にとって13回目の居住空間コース新入生歓迎会。レクチュアラーは中川エリカさん。「バラバラに集まる」という題でどれも刺激的な5作品を語ってくれました。パブリック/プライベート、合理/不合理、可視/不可視、白/黒などのような対立項であると思い込んでいるものを併存混在させるというようなことなのかな。「桃山ハウス」体験で晴れきれなかったもやもやが少し薄れてきたように思いました。まさにthe times are changing。来年から非常勤に加わってくれるのがうれしい。横浜国大猫犬脈がつながる。引き続きの歓迎会の会場構成はこの「バラバラ」がテーマになっていて、歳を超えた交流が例年より円滑だったように思う。楽しかった。居住スタジオの立派なキッチンで用意されたメニューもよくできていた。こういった自発的「バラバラ」コミュニケーションを体験することはこれからの彼女たちの建築との関わりのなかで大きな糧になるはずだ。先生たちの仕上げは津田沼からのグリーン車での一杯。いつも必ず一緒だった顔が欠けているさみしさをゲストが補ってくれた。

7月13日、二軒家ペントハウス。14年前の竣工時からスタジオを置いている「二軒家アパートメンツ」には屋上テラスからアクセスするペントハウスがあって住人どうしの集まりなどにも使われている。集まるための場があるおかげか、大家さんも含めて住人のあいだの交流がさかんなのが楽しい。初期の頃ここに住んでいて今はオーストラリア在住のジュリアン一家の一時帰国に合わせて現旧住人が集まりました。トイプードルのソラちゃんと3歳のレオくんをだっこできたのもうれしかったな。幸せに飲み過ぎて終電を逃してしまいました。