12年前にラブラドールのフクが我が家にやってきてからは、家族での旅行はいつも犬連れになりました。始めの頃には犬と一緒の宿にも泊まってみましたが、その当時はあまりいいところがなく、結局、昼間は宿のまわりに繋いで、夜は犬は車の中のケージで寝るスタイルが定着しました。だからうちの子供たちはホテルや旅館を知らずに大きくなりました。フクはもうお年寄り。車での長旅は辛そうだし、たまたま大学生の息子が旅行に参加しないということで、彼に犬守りを任せ、犬2頭猫1匹を[doghouse]に残しての旅になりました。ひとりで5日間は彼にとっても初めての経験。旅先ではずいぶん心配しましたが、しっかりと犬守りを務めてくれ、犬たちはなにごともなかったかのようにケロッとしています。大きくなったなあと感慨ひとしお。これからは夫婦で日本を離れて旅に出ることだってできるわけです。いっぱしに健啖家の彼へのお土産は、西屋旅館の女将に教わった食材店「さかの」で仕入れた米沢牛の横隔膜。珍しいものだそうです。あっという間になくなりました。

フクはついに頻尿症状が出てしまい、朝晩の散歩のほかに、まめな瞬間外出が必要になってしまいました。朝起きて一緒に部屋から出て直ぐ、それからハヤも一緒にしっかり散歩、家に帰った挨拶代わりにちょっと、最後は寝る直前、というのが私の役割。大切にしてやらなくっちゃ、と気を引き締めているところに、リタイアした4歳の盲導犬ラブを引き取らないかとの問い合わせ。今はダメだ。どなたか興味ある方がいらしたら連絡ください。メス、イエロー、飼い主死亡に因るリタイアだそうです。虎、あざやかに4連勝。負ける気がしませんね。
ユーロスターのロンドン側のターミナルは2007年からセント・パンクラス駅。1868年建設の古い駅舎を改装したもの。この巨大なアーチ状のガラス屋根には圧倒されてしまいます。大きな吹き抜けでホーム階と下階がつながっているので、下階のアーケードやウェイティングも快適です。地下にごちゃごちゃと売店を並べた東京駅とは大違い。

愛嬌のあるオブジェがあちこちに置かれています。

リニューアルで延長された部分の屋根は大屋根と対照的デザイン。ユーロスターとぴったりです。

村上から鶴岡へは海岸沿いの道を走りました。険しい山が海に迫り、数知れない切り通しやトンネルのあいだに小さな村落が繰り返し現れる楽しい道です。おまけに横を羽越本線が走っています。途中には笹川流れと名付けられた景勝地も。ほぼ真北に向かっているということは左手の日本海が西。晴れていればこの上なく美しい夕景になったに違いありません。途中小さな砂浜で一服。薄茶色の少し粗めのきれいな砂の上を渚に近づき、久しぶりの日本海の水を足にかぶってきました。海の上に微かに見えた島影は佐渡ではなく粟島であることが後でわかりました。海の気配を捉えようと構えていたカメラに、餌を漁るカラスの滑空がおさまりました。

カラスが羽を休める大岩の上には小さな海鳥の先客。緊張感のある対話のように見えました。

5月13日に登場した
白布温泉。山形県の南の端、峠を越えると裏磐梯という、深い山里の湯です。今回は西屋旅館に一泊。昔のままの木造のほんとうの旅館です。滝のように流れ落ちる三条の湯は豪快。打たせ湯は頭にではなく肩にという注意書きがあるほどです。湯とともに上から落ちてくる光が素晴らしい。


浴槽は時を積み重ねて真っ黒。中庭側を二重の建具で仕切って、障子越しのあかりを取り入れる構成が効果的。

ざぶざぶという感じで溢れていく湯は、この建具の下を流れて、中庭側に流れていきます。そこここにいい湯。日本はいいなあ。

村上から海沿いを北上して鶴岡泊。酒田では土門拳記念館で亀倉雄策、勅使河原蒼風との三人三様展を観た後、山居倉庫へ。ここの中庭もいいなと思いました。雨上がりです。[doghouse]が懐かしくなってきました。フク、ハヤ、クウはどうしているだろう。

越後村上。ずっと気になっていた鮭の町にやっと辿り着きました。骨董市が開かれているわりには日曜にしては人の出が少ない目抜き通りに創業370年の店があります。暖簾も店構えも立派ですが、家の奥で歴史を刻んでいる、鮭を中心に展開されている生活空間の存在感には圧倒されてしまいました。


野鳥や虫が賑やかな植物群生地、裏磐梯レンゲ沼。ジュンサイで覆われた水面を砕氷船のように進む鴨2羽。ジュンサイBrasenia schreberi。スイレン目。英名water shield。日本の食事は奥が深い。西洋では食卓に上がることはまずないでしょう。しかし、自生しているところを見る機会はそうありません。不思議な植物です。浮きのように水面からちょこんと飛び出しているのが花だそうです。ペンション・オーナー友坂さんの植物ガイド・トレッキングでこんな情景に出会いました。教わったたくさんの植物名は敢無く忘れてしまいましたが、いい写真がたくさん撮れました。

ジュンサイは量的には秋田が一番だそうですが、質の高いものが裏磐梯から東京、京都に出荷されているのだそうです。近くで採れたばかりのジュンサイのコリコリ感は抜群。生姜と塩だけでいただきました。お酒はボルドーの赤。いけました。