この背中は私にいろいろなことを語りかけているように思えるのだけれども、実のところ何も考えてはいないのだろうなあ。昨晩は新宿駅で帰りの中央線快速に乗ったところで「人身事故」が高円寺駅上り線で発生。車内放送がいつになく的確でした。負傷者の救出、車両の安全確認などステップごとに逐一状況を知らせ、並行する緩行線も同じように止まっていることを伝えてくれたので、ほとんどの乗客は余分なストレスなしに平静に待つことができました。あってはいけない事態にすっかり慣らされてしまっている、この状況の重苦しさは、すばやく呑み込んでしまいました。ネコは幸せだなあ。
ゆっくり朝日の朝刊を見ていたら「転落、上を列車通過」という記事。助けに降りた人も含めて無事だった「奇跡的な」出来事とのこと。ほんとに「負傷者」だったんだ。だからみんな落ち着いていたのかも。人はおもしろいなあ。

瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」、今週は小林秀雄。書かれたものを読んだことさえありませんが、近づいてはいけない評論家としておぼろげに私の中に生まれつつあったイメージに、いつもながらの軽妙な筆致で描き出された人間像がぴったりと重なって、まさに膝を叩きました。河豚を食べに行って先ず並んだほかの酒肴に激昂とか所望したブランドと違うブランデーを出されて激怒とかのエピソードは、ただの酒癖が悪いオヤジであれば虫の居所が悪かったといった程度のはなしですが、「目利き」としての大看板を背にした傍若無人だとなると感じが悪いでは済みません。その大看板の裏にある「おれがいいと言えば、その品は、よくなるんだ」を瀬戸内さんが披露してオチにしてくれたおかげで気持ちすっきり読み終えることができました。この手の輩のまわりには近づかないにこしたことはありませんが、出くわしてしまったとしても尻尾は絶対ふらないぞ。写真は新聞を愉しむ私の傍で床暖の温もりをむさぼる動物たちの手、いや足かな。彼らはいつも一点の曇りもなく幸せかな。

サンフランシスコのCCAからフルブライト招聘教授として日本に来ているレビン氏を
[laatikko]に案内しました。建築を把握するのに不可欠な都市のコンテクストを先ずは把握してもらうために東中野で落ち合ってcommunity pathでもありcats alleyでもある蛇のようにうねる狭い暗渠を一緒に歩いていくことにしました。いい機会なので数年前まで仕事場だった
[balcon]の外観をチェックし、最近ご無沙汰だった「十番」でたまご入りタンメンと再会。まだ残っている中央線の旧型車両もカメラにおさめ関根さん設計のフートンにも寄りました。



[laatikko]での会話は室名と機能の関係性や公/私とpublic/privateの違いにまで及び、通訳の学生さんの存在に感謝することになりました。充実した時間でした。レビン氏にとって[laatikko]の空間体験は写真・図面から読み取っていた以上に刺激的だったようです。住宅の質を壁とドアで仕切られた部屋の数で計るような文化のなかで育った彼が、小さいが故に見えてくる住まいの本質を探ろうとしていました。私たちの文化が培ってきたかつての住まいの知恵が、もう探さないと見つからなくなっているのは悲しいことです。一年経った[laatikko]にさほど大きな変化がないのは、設計段階での建築家と住まい手の会話の深度のおかげだろうと、私たちは納得しました。
ソウル2004年冬¶引き続き民俗村、農家の内部。床も紙貼りです。床下のオンドルからの煙が漏れてこないように油を浸みこませた紙がぴっちりと継ぎ目を重ね合わせて貼られています。袋につめた米糠で磨いて艶を出すのだそうです。いい風合いです。ソウルで泊まった古い民家を改装した小さな中庭を囲む韓流旅館の床も油紙でした。


Bob Dylanの初めてのホワイト・ハウスでの演奏は噂されていたJoan Baezとの共演ではなくウッドベースとピアノだけの伴奏でのアコギ弾き語りでした。The Times They Are A-Changin’。この歌が書かれて四十数年。悟りの境地に達したかのような穏やかな演奏でした。12日の1時まではYouTubeで観ることができたのですが今はブロックされてしまっています。残念。かわりにオリジナルが収録されている1964年のLPジャケット映像です。珍しいモノラル盤。うちにあるのはレプリカで、これは
ディランの公式レアリティを網羅したサイトからダウンロードしたものです。
ここからアクセスすれば今ならビデオを観ることができます。

scan by Hans Seegers
上が1963年、撮影はPPMのMaryの夫だったBarry Feinstein。下が2010年ホワイトハウスで。

photo by Pete Souza
昨日は朝から晩まで日大生産工学部の卒業制作優秀作品選考会。それぞれ全力を出しつくした作品があるものはさらに輝きを増しあるものは想いを伝えきれないまま評価されていきます。最優秀作品「難民都市」に込められていた建築への情熱に元気づけられました。ありがとう。巨大な模型が圧倒的な存在感でした。建築は面白いもの。この作品をまったく認められないという同僚もいて、打ち上げの居酒屋で議論が白熱。最後まで盛り上がりました。

上が「難民都市」。下は優秀作のなかで模型が特に目を引いた2作品。

