Sicilia series。チェファルー。パレルモから東に50kmほどの標高250mの岩山と地中海に挟まれた街。カルタゴ起源ともギリシア起源とも言われる。エリーチェとは異なり、岩山には城壁と神殿跡だけが残っている。岩山に登ると街に刻み込まれた歴史が分かり易く見える。海に向かって走る計画的街路はギリシア起源でその奥にひろがる迷路街がアラブ起源。2本の尖塔がランドマークになるカテドラーレはノルマン王国時代の建築。薄いベージュの壁にオレンジの屋根瓦は共通で地中海の青を背景に美しい。激しい風が海から吹き付けていて海辺と岩山では目を開けていられないほどだったが石造りの街の中は穏やかで観光客でいっぱいだった。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。
Sicilia series。パレルモ。ここまではギリシアの植民都市を起源とした都市が多く登場した。ローマ時代の痕跡はそこにローマ人が手を加えたものも多い。ローマ時代のモザイクタイルが残る豪邸ピアッツア・アルメリーナは観光名所のひとつにもなっているけれどここではスキップして時代を中世に進めよう。多神教のローマ帝国がカトリックになって終焉したあとシチリアはビザンツ、イスラムと覇権が変遷し12世紀にはノルマンの王国ができる。現在はヨーロッパの周縁と見做されている小さな島は、中世には多様な文化が重なり入り混じる文化の要衝であったと捉えなおされている。それ故に建築史的に見どころが多いのだそうでたかだか数日の短い旅では捉えきれないものも多い。教授が率いる団体旅行ということもあり街を歩き回る時間はほとんどなく、メルカート(市場)にも行けなかった。ほぼ唯一の現代建築としてスカルパがレスタウロした州立美術館くらいは行きたかったのだがこちらは曜日の巡りが悪かった。街一番のジェラートには在住の知り合いに連れられてありついた。遅くまで開いていて明るいという意味でコンビニのような店で街のグラッパも体験した。が、パレルモの街はあらためて歩かなくてはいけない。脈絡を切った断片的コラージュでパレルモの文化的重合性を感じていただければと思う。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。
Sicilia series。アグリジェントからシチリア島南西部を海沿いにバスは走る。このあたりは西南西に150kmくらい向こうがチュニジアで、古くから現在までアフリカ大陸との玄関口になっている。ブドウ、オリーブ、レモン、小麦が育てられる穏やかな丘陵地帯にギリシアがつくった都市の遺構が散在する。心優しい同行のおかげで必ず窓際に位置している私はカメラを構えて居眠りをする暇もない。電柱がない、看板がない、工場でつくったモノがない田園風景は美しい。そこに石積みの小屋、巨大な岩石、石橋などがときどきぽつんと姿を現す。羊の群れもいた。そんなシークエンスで遠くの岩山の上に街が一瞬姿を見せた。あとで野口教授に確認してもらったら思った通りシャッカだった。アラブ人がつくった港を起源とするアラブ色濃い街なのだそうだ。彼は40年来の建築友だちで私のなかでは「野口くん」なのだが、今は藝大教授でシチリアを研究している。事前に読んでおくべき本を尋ねたら、陣内秀信の「シチリア・南の再発見」と高山博の「中世シチリア王国」の2冊が必要十分であると明解な答えが返ってきた。その陣内さんの本に大きく取り上げられている10の都市の中で今回の野口さん設計のツアーに含まれていない2つの1つがシャッカなのだ。ここは今では良質のアンチョビ産地として有名で、ここを訪れるのは次の機会になったけれど、近くでお土産に入手できたのはうれしかった。田園風景にパッチワークされるギリシアとアラブの圖。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。
Sicilia series。シラクーザ。ローマ人はここのギリシア劇場は模擬海戦用にレスタウロするのを止めて近くに新築している。ギリシア劇場は音楽祭の最中で現代オペラのセットが組まれ客席の大部分は板製の客席が組まれていた。海戦や剣闘士ショーは過去完了だがギリシア時代のエンターテインメントは基本的に継続されているわけだ。オルティージャと呼ばれる海に囲まれた島状の旧市街が魅力的だった。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。
Sicilia series。タオルミーナ。ギリシア人がつくってローマ人が手を加えたギリシア劇場で有名な観光都市。私たちが訪れた一週間後にG7が開催されたのですでに警備が物々しかった。迷彩服の軍人が機関銃を剥き出しで持っている姿は刺激的だ。この島でテロを起こしても逃げるのが容易ではないのでテロは起きにくいと説明されて納得。警戒態勢のためケーブルカーが動いていなかったのは残念。ウンベルト大通りに直行する路地は北に登り南に降りている。ギリシア都市と中世都市が併存している。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。
Sicilia series。エーリチェ。フェニキア人が作ったと言われるシチリア島北西部のこの街は紀元前10世紀のエトルリア人の痕跡も刻まれているというほど古い歴史を持つ。ギリシア、ローマ、アラブ、ノルマンと積み重ねられた歴史を建築的に読み解く前にまず標高750mの岩山に実在する石畳の街の強い土地性に圧倒される。緩やかな起伏の大地に天から降ってきたかのように存在する巨大な岩の塊の頂部が街になっているのは尋常ではない。外敵の脅威がいかに熾烈なものだったかを物語っているのだろうか。土地への強固な執着を前提にした莫大な財力・労働力があったことは確かだろう。fbのmichio kinoshitaアカウントに別の写真もアップしています。