
水戸の千波湖には白鳥と黒鳥がいた。黒鳥はかなり狂暴らしく人を襲うこともあるということ。この日も白鳥を威嚇して追い払っていた。「黒い白鳥」が17世紀末にオーストラリアで発見されるまで「あり得ないもの」の代名詞だったのだそう。起こるはずがないと思っていたことが起こると代償は大きい、というのがブラック・スワン理論。3・11がそうだ。
コクチョウ黒鳥Cygnus atratusカモ目カモ科ハクチョウ属。英名black swan。

鳥の知り合いがどんどん増えている。鳥そのものが増えているとは思えないからこちらの懐が深くなって判るようになったということだろう。20年くらい前に高校同期が脳外科クリニックを開業した時に「脳は四十から」とあいさつをくれた。もう遥かに時間が過ぎているから気を付けなくては。
シジュウカラ四十雀Parus minorスズメ目シジュウカラ科。英名Japanese tit。

鳥はそもそも哺乳類から見ると随分と変わった形態をしているのだかなかでも鷺の立ち姿は独特だ。車窓の田畑に白い姿が点在していると里の風情がひろがり始める。アニメの「銀河鉄道の夜」の暗い画面に散る鷺もいい。そう言えば「鷺捕りのおじさん」は元気かなあ。
コサギ小鷺コウノトリ目サギ科。英名little egret。



photo lower left by ay.
18きっぷは5枚構成なので短い有効期間に1人で使い切るのは難儀だが同行がいれば簡単。水戸の残りは翌日の勝沼行きに充てた。中央線には各停のグリーンがない代わりに
「ホリデー快速ビューやまなし」がある。この全車2階建て車両は旅ごころ満載で固定ボックス席なので4人組には最適だ。特急料金なしなので18きっぷと組み合わせると超お得な鉄道旅になる。今回の主眼は建築がきらいと大泣きをしたまま卒業してしまいそうな学生に刺激を埋め込んで送り出すこと。で2010年に竣工した[シャトー・メルシャン]勝沼ワイナリーへの小旅行となった。ただ建築でワインではなく設計した建築を見守り続ける建築家の姿勢を体感させることもある。雲一つなく晴れ渡った勝沼がルンルンと迎えてくれて楽しい一日になった。使われ方は想定の枠をはみ出しながらも成長している。商業施設としてはほぼ定着したと言っていいだろう。左下のバーカウンターの写真は別の学生の撮影。狙いを理解したいい写真だ。件の学生に埋め込まれたタイマーはきっといつか作動する。



恒例の青春18きっぷで水戸偕楽園へ。録画してあったブラタモリに素直に反応してしまった。2年前の1月にやはり18きっぷで
常磐線を北へ走ってフクイチ近くの「現終点」竜田まで日帰りした時に水戸駅の手前で偕楽園の脇を通って鷺が梅林を歩いているのを見て興味は持っていた。臨時停車駅の偕楽園で降りて、ブラタモリで習ったとおり、反対側の表門から入った。確かに薄暗い竹林を抜けてふっと開けたところに優雅な梅の園という流れはいい。鵯、鶫、百舌もそこらじゅうにいる。3層の好文亭に上がると梅林が点描画になっていてその向こうには千波湖も見える。ふらりと来てライトアップも体験できたのは運が良かった。花そのものの美しさは暮れなずむころの灯が一番かもしれない。夜になると偕楽園には列車が止まらないので水戸駅に回った。2年前のとは大違いの楽しい旅だが北のその先の状況はほとんど進展していないのだろう。その状況を知る手段さえ朧げな時世だ。3月11日の朝刊トップは朝日新聞も含めみな「南スーダン撤退」でフクイチは東京新聞だけだったようだ。


新宿御苑で鳥や花を見て何時間も楽しめるのだから思っているより歳をとっているのに違いない。いや犬が日常から消えてしまったからそのあたりの気持ちの先が変わっただけのことかもしれない。御苑には犬は入れないからなおさら鳥に敏感になって常緑樹の枝に潜んでいた小さなモズまで目にとまった。一度富士吉田で見たことがあるがかなり珍しい。見かけは可愛いが獰猛なのだそうだ。そう言えば獲物を枝などに串刺しにする「はやにえ(早贄)」の習性があると習ったことがある。興味深い。この日はツグミもカメラにおさめた。バックシャンだ。
モズ百舌、鵙Lanius bucephalusスズメ目モズ科。英名bull-headed shrike。