
六本木ヒルズには出来るだけ近寄らないようにしているのだが年に2回だけカットハウスに通う時にはたいがいここを通る。街に積み重ねられてきた重い歴史を白紙に清算して創り出された空間は、砂漠に唐突に出現したショッピングモールのようなもので、薄っぺらで地域性は皆無だ。漂白されてしまったエリアから周りのまだなにがしかの名残のある界隈へと通り抜けたあたりで出会った男の子。子供らしい無造作はティガー(かな?)には心地いいだろう。

六本木ヒルズ。合州国の組織設計事務所に頼んで生まれたファサードは侍の兜がモチーフだと言うから笑ってしまう。低層部には大手企業の宣伝のための空間がひしめきあっていてそこそこに賑わっているから商業的には及第点なのだろう。こんなに不愉快な処でも足が止まってしまうこともあるから街歩きは忙しい。まあなんでも繰り返し並べると目は驚くものだ。ウヰスキーはストレート、百歩譲って水割り、と思い込んでいるので、我が意を得たり。

「あゝ、りんだうの花が咲いてゐる。もうすっかり秋だね。」と言ったのはカムパネルラだった。映画「銀河鉄道の夜」の細野晴臣の音楽も好き。ますむらひろしによる猫仕立てもはまっていた。段ボール箱のどこかにDVDがある。季節だ。ジョバンニや鷺捕りのおじさんは元気だろうか。