酒石 シチリア 四季島

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勝沼逍遥。「勝沼ワイナリー」で店長に薦められて急遽「丸藤葡萄酒」を訪ねることにした。勝沼は日本のワインづくりの原点と言える場所で、歴史ある醸造所も多い。ここも1890年創業で見学した施設の特に地下部分には永い歴史が刻み込まれている。壜貯蔵庫の壁には無数の酒石が付着してきらきらしているのだが、もともと貯酒のためのコンクリートタンクだったのをリニューアルしたからだそうだ。ここではびっくりするような出会いがあった。なんと施設見学一行数名の一人がこの5月のシチリアの旅のメンバーだったのだ。念のため申し添えておくとシチリアは建築の旅でワインの旅ではない。たいがいのワイナリーでワインは飲めるけれど食事まで提供してくれるところはそう多くはない。ランチは葡萄畑を数分歩いて「ルミエール」のレストランへ。グルテンフリーにも細やかに対応してくれる。甲州をマセラシオン醸造した「オレンジワイン」がぴったりのランチだった。豪華列車「四季島」1泊2日クルーズは塩山で途中下車してここでワインセミナーだそうだ。参考までに最廉価室で2人64万円、雲の上だ。往路の車窓に多数群がっていた撮り鉄のターゲットは「四季島」だったのだ。次は塩山停車中の「四季島」をカメラに収めよう(笑)。

鳥 ワイン 鉄道

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勝沼逍遥。山々に囲まれた平らな盆地に湖に浮かぶ島のように存在する小さな岩山の頂部にワイン蔵+温泉+宿「ぶどうの丘」がある。勝沼町だった1975年につくられ今は甲州市営。予約が取れないので定評があり今年も12月まで休前日は満室。現場に通い始めた10年前から幾度となく宿の予約を試みて初めて今回泊まることができた。標高は500mで麓の平地とは120mの高低差があるから眺めはいい。西側にある露天風呂からの夕景はみごとだ。地盤面から120mの高さで空の下の湯につかるのは格別で夕夜朝と天空を楽しんだ。アイレベルを鳥たちが飛び交う様を撮影できないのは残念(笑)。東向きの客室の窓の正面に一面の葡萄畑と近くに迫る山並みとがあるのは常ならぬ眺めだ。点在する民家にあと僅かでも文化的統一感があれば絶景と言えただろうと惜しまれる。街並みも景観も地域の共有の資産であるという認識が将来の日本をつくることになるのだろう。今でも望遠レンズで激しくトリミングしてしまえばまだまだ映えどころはある。勝沼ぶどう郷駅は標高がほぼ同じで盆地の周縁部を南から北へ下りながら駆け抜けていく中央本線の車輛がジオラマのように楽しめる。

車窓

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Sicilia series。バス旅行では移動中はほとんどの人が眠っているものだが、窓際に座らせてもらっている私はそうは行かない(笑)。今度の旅では車中でグラッパを飲みふけっている強者もいたがそのうちの一人は今は断酒している。シチリアの農村風景は電信柱も看板も工業製品の家もなく絵になるのがうらやましい。

漁街

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Sicilia series。高台にある旧市街の下には漁港沿いにできた新しい町があって、現在のシャッカは水産加工の町として有名になっている。イタリア産のアンチョビはほとんどここで加工されているはずだ。陣内さんの本に実測図が載っているコルティーレ・カリーニの入口の脇の小さな店でマグロの瓶詰に出会えたのは野口教授のおかげだ。右上の写真左がアーティチョークとマグロのパテ、真中がボッタールガのパテ。十数年前に谷内田さんにお土産に買ってきてもらった塊のボッタールガは、その後の黒マグロ情勢激変のせいか、今回の旅でも見つけられなかった。漁港の脇に水産品マーケットを見つけたのだが開店中にアクセスできなかったのが悔やまれる。ここならあったかもしれない。

Sciacca

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Sicilia series。野口教授と行くシチリア建築旅は去年に続いて2回目。去年は旅に携行した陣内さんの「シチリア・南の再発見」でシャッカは「アラブ世界に最も近い町」として熱く紹介されている。ギリシア時代は植民都市アグリジェントとセリヌンテの中継点、ローマ時代は前哨基地で小さな集落に過ぎなかったが、その後のアラブ支配時代に都市として発展し、シャッカという地名も集合住宅に関連するアラビア語がもとになっているという説もある。14世紀以降に形成された大通り沿いの街区の裏にアラブ期を起源とするコルティーレと呼ばれる袋小路が無数に存在している。コルティーレを取り囲む居住ユニットの生活が行止まり空間に滲み出てきているようすが見どころなのだろうが、通り過ぎるだけの私たちはその雰囲気を鼻で感じ取るしかない。町のはずれにギリシア人が発見しローマ人がテルマエを建設した温泉の名残があるのもシチリアらしい。

勝沼ワイナリー

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勝沼逍遥。メルシャンが新しく桔梗が原ワイナリーと椀子ワイナリーをつくることになって「シャトーメルシャン」が「勝沼ワイナリー」に変わった。勝沼のある甲州市には2017年8月時点で37のワイナリーがある。日本ワインがすっかり定着してワイン愛好家がたくさん勝沼を訪れるようになってきたのはうれしい。ナパでは隣のワイナリーには車で行く感じだがここでは歩いていくつものワイナリーを巡ることができる。原茂ワインからは少し南に歩いて旧甲州街道を渡ったあたりが日川の河岸段丘の縁で川沿いの低地に広がる葡萄畑の向こうに「勝沼ワイナリー」がある。竣工して8年が経ちすっかり土地に馴染んできている。コルテン鋼のフラットバーや苦労して遺した灯籠や石碑などが効いてきている。随所に適当に貼られているサインなど気になることはあるのだがメニューが少し進化しているのがいい。この6月からは今まで非公開だった醸造施設と貯蔵庫も見学できるようになった。

勝沼逍遥

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勝沼は東京から近い。鉄道なら勝沼ぶどう郷は新宿から「快速ビューやまなし」なら運賃\1,944だけで行ける。座席指定をしても\2,464。ところが「えきねっと」を巧く使うと特急座席指定で山手線内-甲府\2,060。人気があるらしく先行予約初日に申し込んだのに復りしか取れなかったので往きは「快速ビューやまなし」。特急「かいじ」より数段洗練された車輛の2階ボックス席を2人で占拠して満足。今にも雨が降り出しそうな空は笹子トンネルを抜けたら青空になっていた。よくあることだ(笑)。で、勝沼ぶどう郷駅からタクシーで勝沼醸造というシナリオを急遽変更して葡萄畑の中の坂道を下って原茂ワインへ。ムクドリ、ヒヨドリが群れ、ツバメが飛び交いウグイスが囀る。写真はキセキレイだろうか。ワイナリーの葡萄棚の先にある土間ではボーダーコリーが寝そべったまま迎えてくれた。開店直後なのに満席でリストに名前を書いて待つ。3組目だと思っていたら2枚目だった。ゆっくりとした時の流れの中でのんびりとランチを楽しんだ。もちろん甲州も。
 

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木下道郎 ・ 建築家
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