蕾 蜻蛉

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蓮の蕾の蜻蛉は蜉蝣のように儚くはない

蓮池には蜻蛉もいた。動くものには忽ち反応をしてしまうから忙しい(笑)。いい時間が続きますように。

近現代建築資料館

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2013年に湯島に近現代建築資料館が開館したことを迂闊にも知らなかった。東京新聞の黒瀬陽平さんの美術評を転載したフェイスブック投稿でその存在を知って、開催中の「平成30年度収蔵品展 建築からまちへ1945-1970 戦後の都市へのまなざし」展に出かけた。同館収蔵の坂倉準三、池辺陽、大正人、吉阪隆正の図面が展示されている。トレぺに手描きの50年以上前の図面はそれだけで重い存在感がある。坂倉の「新宿計画」には驚くほど広い範囲が描かれていて、現存する空間を毎日通い抜けているだけに興味深かった。「新宿西口本屋ビル」というのが今の小田急百貨店だ。池辺の「渋谷區復興計畫案」は初見。卒業制作のようにのびのびしている。いずれにせよ放っておくと散逸してしまうに違いないこういった図面を収蔵するのはいいことだ。新旧2棟を改修した資料館全体の設計も気に入った。外壁のツインカーボ、ステンレスメッシュなど建築マインドあふれる素材の選択はけっこう大胆だ。設計は意外にも国土交通省関東地方整備局。あっぱれ。岩崎邸のもともとの敷地の一部にある資料館は隣接するコンドル洋館や和館とはなんとか折り合いをつけているのだが、庭園に隣接する湯島合同庁舎の建物は庭園の存在価値を著しく阻害している。悲しい。

蓮 永遠

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時も光もよぎる透ける透きとおる

東福寺は独りで訪ねた。重森三玲の庭に向き合いながら青い森の鳥の囀りを聴いた。蓮池に心奪われた。いい時間だった。

余呉

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青田の中の一面二線の駅から5分も歩くと余呉湖畔。琵琶湖より標高が50m高く周囲を山で囲まれている。湖面が穏やかなことから「鏡湖」とも呼ばれているそうだ。台風由来の通り雨であたりは湿り気を帯び、煙る山を背に虹が幾本もかかった。時を止めて別世界に迷い込んだかのような不思議な一時間だった。先生2人がつきあってくれていなかったらもっと深く踏み入れていたかもしれない。だから去年の彼が見たものが見えたのかどうかはわからない。683系「しらさぎ」と貨物列車が青田を駆け抜けていくさまを写真に捉えられたのは個人的には大きな成果だった。

鷺 青田

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糧を得る青田の美しさを鷺の白さに噛みしめる

昨年、非常勤講師仲間が米原で別れて独り余呉に向かったのが気になっていた。それで針江からの帰りに途中下車した。1時間1本のローカル駅。美しい日本が確かにあった。

川端

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居住空間デザインコース京都研修旅行で白河院の大広間で学生たちと飲み明かした翌日は先生たちと徒党を組んで寄り道をして帰京する。今年は琵琶湖西岸をまわって北の方にある高島市針江を訪ねた。この地区は山からの豊富な伏流水が地表面近くを流れていていたるところに水が湧き出ている。地中に管を少し差し込めばどこでも清水が自噴する。街を流れる清流を家に引き込んだ「はた池」を魚や蟹が入り込まないように囲って「つぼ池」としそこに水が自噴する「もと池」を設えてこの地独特の炊事場「川端(かばた)」となる。普通はこれが家の中の土間に続くところにあって「内川端」と呼ばれる。家が取り壊されて屋外になった川端やお地蔵様のための川端は「外川端」。湧水が流れる川には琵琶湖から上って来るコイ、アユ、ヨシノボリ、サワガニなどが棲んでいて、炊事場から出る残り物を分解してくれる。湧水の温度は一定して12℃だから夏はスイカ、ウリ、キュウリ、トマトなどをここで冷やす。街の見学は申込制になっていて私と同年輩のボランティアの案内で街と湖岸を3時間近く歩いた。豆腐屋では川端で冷えた豆腐をいただいた。ガツンとくる木綿だった。2005年にNHKスペシャルで報道されたことで急に来街者が増え、暮らしを守りながら川端を維持していくための自主組織「針江生水の郷委員会」が生まれたのだそう。彼の熱い語りで委員会のさまざまな努力について教わった。飲料水事業などの外部資本に頼らずに自分たちの力で環境を維持して行く試みに拍手を送りたい。針江の町の青田は無農薬で琵琶湖の魚が棲み鳥が群れる。葦が繁る琵琶湖岸も野鳥や川魚にあふれる美しいところだった。

house M

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松田ナオノリさんのhouse Mで8月12日に開かれた「伝統文化対話シリーズU:軸線と非対称のバランスon axisU 」に参加させていただく機会を得た。house Mは松田さんのご自宅を含む3ユニットからなる重層長屋で西麻布の住宅街に建つ。地下1階から4層分の中庭をロの字に囲みながら3住戸が建築基準法上の共有部分を持たずに空間を共有している。その鮮やかな設計士としての技と四方を囲まれた4層中庭の建築的魅力に惹きつけられて99年に発表された当時懸命に図面を読んだことを覚えていた。だからひょんなことで縁が近づいている室伏さんからのお誘いに即答した。やはり素晴らしい建築だった。図面と写真からは読み切れない発見がたくさんあった。地階のFLと中庭に40cmくらいの段差があって地階の縁に腰かけて中庭を囲むのは新鮮だった。「軸」を主題に室伏さんの「ダイキン・オー・ド・シェル」とランドスケープ・アーキテクトの杉浦榮さんの仕事を手掛かりに対話が進んでいく。日本語の「軸」はかなり多義的な含みの多い言葉で、だから建築家に好んで使われるのだろうが、これをaxisと英訳したとたんに趣きが変わってくる。トムヘネガンが指摘してくれたようにaxisは終点が伴う強い方向を表す。神、権力、ランドマーク、シンボル。「軸」はline、direction、center、stemといったものも含むから「掛け軸」「車軸」もあれば、心も体もマッチも「軸」を持つ。あぶない言葉だということがよくわかった。これは余談だがAxis powersは「枢軸国」だ。対話の後は中庭で中華テーストの菓子と茶。縁に座った参加者がひとしきり語った後、1階に上がって中華テーストの洗練された料理とお酒。いろいろ語り合って稔り多い時間になった。明確な意図を持った空間が生き生きと使われている様を体験した。旧知の田中厚子さんとの再会もうれしかった。

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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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