
斎藤輝彦さんに誘われて吉岡裕子さんのピアノを聴きに高崎まで出かけた時に出会ったのがジャズ・ベーシストの山田晃路さん。たまたま私の誕生日に新宿Somedayに出るというので表敬訪問。ヴォーカルメインのピアノトリオのピアノはあの佐藤允彦。よかったですね。演目はDylanが直近の2枚のCDで取り上げている旧き佳きアメリカの歌と同じ時代の音楽。以前ならリクエストなど及びもつかなかったはずだけれどFallen AngelsからPolka Dots and Moonbeams(Jimmy Van Heusen-Johnny Burke,1940)をお願いしました。ヴォーカルの後藤芳子さんの想い出の曲だそうで、1958年にベニー・グッドマンが来日した時にご自宅に招いてこの曲を歌ったのだそう。もう80過ぎとは思えない元気さに驚かされました。75歳のDylanの歌の巧さも再認識。Happy Birthdayまで歌っていただいて、しあわせな夜。音楽の縁に感謝。佐藤允彦が鎌首をもたげたヴォーカル抜きの2曲はスリリングでした。やっぱり攻めないとな。

今年の4年生の設計演習は敷地を新宿御苑の周縁部に設定している。先日学生たちと一緒に新宿御苑の先ず内側を一周してからその周縁部をぐるりと歩いてみて発見したのが新宿高校裏の宿屋街。新宿駅の至近距離にありながらシティホテルともラブホテルとも違う不思議な宿泊施設が集積している。簡易宿泊所とビジネス旅館には湿っぽい雰囲気が漂っているのに対して[apartment hotel shinjuku]はかわいい。ロビー、階段、廊下にはアートが散乱しかつ販売されていて屋上には[under construction]という名の会員制屋外バーがある。カウンターは単管足場とガラスで構成されていて確かに建設中の雰囲気。天体望遠鏡もセットされている。眼前に拡がる新宿高校グラウンドでの女子高生の部活が絶品ですよとマスターが教えてくれた。乾ききった大都会の隙間にこんな楽しい世界があったとは。会員になったのでいつでもご案内しますよ。グラウンドの向こうにNTTの不快なモノが屹立しているのだけが残念。

阿部勤さんの自邸[中心のある家]で出会って以来気になっていたTete de Moineカーラーgirolle。特定のチーズを削るためにだけあるという汎用性の低さは鰹節削りと似ているかも。テットドモアンヌ付きの粋なプレゼントがうれしい。これからはワークショップ・パーティの定番だな。

みなさん、誕生日のお祝いありがとうございます。なにかと不安の尽きない世の中ですが、facebookやinstagramやlineといった新しいツールは悪くはないなと感じます。最近facebookの反応が鈍いのでinstagram経由でアップしているため写真が共通してしまっていますが、ツールに合わせて使い分けたいと思っています。[doglog]には定期購読者が何人もいらっしゃるようで励みになっています。でも一番うれしいのはアナログのインターフェイス。いろいろと幸せです。写真はfacebookやinstagramと同じコレにします。女の子ばかりでなく男の子もかわいい。

去年の誕生日を祝ってくれた仲良し2人に誘われて東京文化会館のHilary Hahn。クラシックは門外漢だしヴァイオリンのコンサートは初めてなので予習のためにゲットしたCDのなかにベートーベンのヴァイオリン協奏曲があって記憶が60年逆戻りしました。私が生まれて初めてのめり込んだ音楽がこの曲なのです。今ではBob Dylan1曲が終わらないうちに眠りに落ちてしまうのに、幼稚園の頃はこのLPの表裏を聴き通してやっと眠りつくほどだったそうで、おかげでこの名曲のメロディは今でも諳んじられるほど。私のハイフェッツ=トスカニーニ盤は幼少の私にとって悲痛な音楽だったのに比べてなんと艶やかで美しいこと。不思議な縁もあってあっという間に彼女の魅力に引きずり込まれてしまいました。彼女が古典を弾きこなしながら新しい音楽に挑戦している姿勢が好きです。現代の作曲家に委嘱した27の小品を集めた2枚組27 piecesは硬軟混淆で手強かったけれどそれなりの予習をして文化会館に足を運びました。この建築を体験させようとゼミの学生を連れてきた教授の心意気にも感服。そしてHilary Hahn。前半はモーツァルトとバッハ。伴奏のCory Smytheのピアノの美しさに先ず感動。後半は20世紀のコープランドを挟んで現代。だんだん聴く耳も乗ってきて、アンコールを含めてラスト4曲の27 piecesCD曲で極まりました。繊細な現代ピアノに重なる消え入るようなヴァイオリンの調べに目を閉じていつまでもひとりで余韻に浸っていたいと思いました。60年前のハイフェッツ。この感動は彼女のおそろしく完璧な技術にささえられているのでしょう。終演後にDylanとは違ってサイン会を開き、誕生日だった学生にはケーキまで描いてくれるHilaryが好きです。で、締めは仲良し2人とHilaryにシャンパーニュ。幸せな夜だったなあ。開演前のハヤシライス美味しかったなあ。

旧くからのいくつかの縁の綾に漂う不思議なバー。3度目でしかないのになぜかいつも気になっていた場所。無垢のアルミ板のカウンター、壁から突き出したショーケース、不思議な小物。この小宇宙の所以を物語るポスター。私の65歳の誕生日に14年半の灯を消すことになって、旧くからの友とその元気な連れ合いとの鼎飲。
[ハナミドリ]から山手線を半周抱えて来たトルコ桔梗がこの空間の最期を伴にすることができたらうれしいな。おつかれさま。

上質の艶やかさを柔らかく漂わせてくれるトルコ桔梗に味わう幸せな時間。65歳の誕生日まであと1日。