五月

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「電話のおねえさん」に惚れていた頃やはりヴァーチャルだがプラトニックとは言いにくいお気に入りが深夜にいた。Far East Network(進駐軍放送)の"Date With Chris”のChrisさん。午前1時からだったかのセクシーながらもかわいい声が好きだった。当時ほかでは聴けない曲がかかったのもはまった一因かもしれない。記憶違いの可能性もないとは言えないのだがPPMの”For Baby”のレコードとは違うストリング伴奏付きがかかったことがある。まだDylanに開眼する前によりによってJohn Denver作(当時のクレジットは変名になっていた)のこの曲が好きだった。定期試験のために丸暗記したものがこぼれ落ちないようにそっと歩いていたような時分にすでに何か手がかりを見つけつつあったとも言える。この女声はもう記憶の彼方だったがgoogleでたちどころにMs.Chris Noelとわかった。極東に送られた若い米軍兵士を慰める仕事をしていたわけだ。写真は洗足池の小島の赤い鳥居近くのサツキ。

藤棚

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見知らぬ女性の声に深く魅せられてしまう傾向が昔からある。高2まで受験勉強一筋だった私が中3の頃から密かに憧れていたのがTBSラジオ「こども電話相談室」の「電話のおねえさん」高階玲子さん。いろいろあって当然な年頃にプラトニックどころかヴァーチャルで済ませてしまえるところがわれながらすごいが発育が遅れていたと言われればそれまでだ。TBSアナウンサーにはもうひとり思い出の人がいるのだがその話は改めてということにして洗足池の藤。

木香

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東横線で通勤するようになってから3年が過ぎた。渋谷駅でのJRとの乗換の信じられない混沌に当初はかなり腹がたったが、人はよくできたものすぐに慣れたと思っていたが、暫く定期券を使わないことにして毎朝都合で経路を選ぶようになってみると、あの5階分の階段登りはいくらiPhoneがカウントして励ましてくれてもめったなことではやりたくないと思うようになった。東横線の渋谷駅はこの乗換大問題のほかにも階段の幅がラッシュ時の需要にまったく対応していない、下り電車の一部が上りホームから発車するなどの不愉快を抱えている。設計した建築家は卵状の物体をつくることだけが主眼で動線計画などの機能的問題は東急電鉄に任せたに違いない。建築家だけでなくおそらく電鉄の担当者も電車通勤の経験が皆無なのだろう。それなのに人間の一般的行動から学習しようとしないからこんなことになるのだ。電車は毎日動いているから地震かなにかで駅が崩壊でもしない限り何十年もこの事態は改善できないだろう。嘆かわしいことだ。この不始末に建築家が関与している事実は広く一般に認知されているから私はこの駅を嫌いにならざるを得ないのだがここでひとつだけ許せるのは車内で流れる録音されたアナウンスの声色だ。かわいいでも色っぽいでもない媚諂いのない女声。好みだ。特に発車してすぐの「ありがとうございます」のなんとも言えない感じがいい。googleで調べると声の主は西村文江さんであることが直ちにわかった。東横線ばかりでなくかなりの私鉄線で活躍しているらしい。駅の不愉快な写真に代えて呑川緑道の黄モッコウバラ。

シジュウカラ

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呑川緑道の桜並木が途絶え東工大キャンパスの豊かな樹々の間を抜けるところでこの写真を撮った。小さなシジュウカラの素早い動きによく追従できたものだと我ながら思う。球技が押しなべて苦手なほどの動体視力の持ち主だから、鳥に深く馴染んでいるということだ。

ムクドリ

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この嘴が山吹色のムクドリもかわいい。そう言えば小学生の頃椋鳩十が好きだったなあ。60を過ぎてなお変わらない動物好きはあの頃にインプットされたのかもしれない。

オナガ

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鳥の世界にも季節がある。あれだけ賑やかだったヒヨドリがどこかに姿を消し代わりにオナガが目に付くようになった。一方樹々も新芽の季節になり目を楽しませてくれているがカメラで鳥を狙うにはやっかいだ。

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朝の陽に透かされた新緑は輝くようだ。人の眼はカメラの望遠機能はないが感知した映像を脳が自由自在に読み取り、カメラがそれに従う。同じ情景を若いころの私はどう読み取っただろうか。鳥、花、緑が見えなかった頃もあるように思う。長閑な朝。

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水辺のベンチに四半時も座っていると時の流れは緩やかだ。鴨が珍しく一羽で滑るように前を横切って流れ落ちる白い水飛沫を上って行く。翡翠の姿は今日は見えない。サクラはあっという間に散ってしまって新緑で埋め尽くされた風景の中に小さな花を見つけた。背景は水面に映る新緑。

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木曜朝は洗足池現場定例。[bigdog house]から呑川緑道を歩40分。晴れていれば余裕を持って出て洗足池を楽しむようになった。渡り鳥がいなくなって冬の賑わいはないが犬、鳥、緑、花、清々しい。今は樹々に一斉に新芽が出て若い緑が気持ちいい。翡翠と出会った水辺の高木の頂部に留まる鴉を撮ろうとした瞬間飛び立った。路に屯している鴉は醜いが大空を飛ぶ姿は美しい。

黄金町

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花筏の大岡川を歩いた。黄金町あたりは学生だった頃にはかなり怪しい人臭い街だったがアートと建築を手掛かりに新しい街に変貌を遂げている。京急のガード下に嵌め込まれた建築はYGSA飯田義彦スタジオの設計。大岡川に浮かぶ船を見ると40年前の卒制手伝いを思い出す。

野毛町

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野毛は味のある街だ。動物園から下りてきたところに開けっ放しの渋い「包丁処」を見つけて思わず吸い込まれた。鮪のなめろう、〆鯵、タケノコ焼き、みな仕事がしてある。「こつ蒸し」を頼んでみたら長崎の武蔵の「かぶとむし」だった。表に青い干物網?がぶら下がっているところも同じだ。「たち花」、奥の深い店であることは確か。

中華街

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横浜ぶらぶら。中華街で朝粥とくれば「安記」。45年前と変わらない選択が当たっているのかどうかはわからないが、納得。裏路地の雰囲気も多くは昔のままだ。学生時代にお世話になった「新楽」もまだあった。懐かしい。

枝垂柳

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やはり洗足池のシダレヤナギ。このなよっとした感じは風土にあっていると思う。こういったものはあまりクリアに写すよりも僅かにぼけていた方がいいのかも。

小米柳

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ヒヨドリが集まっていたので気づいた洗足池のコゴメヤナギの花。ミモザまたはミモザモドキの派手な黄色と違ってふわっとした黄色。

山茱萸

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桜が咲くと日本もいいなとは思うけれど風土にあった美しく朧げな草花はほかにもある。これはひと月ほど前の新宿御苑の山茱萸と満作。この日は染井吉野はまだだった。オシドリ、ゴイサギ、モズ、ツグミ、鳥もいろいろいたなあ。

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千鳥ヶ淵のサクラは昼と夜では趣きがかなり違う。昼は華やかで夜は凛として美しい。特にライトアップが桜色に着色されていない真っ白な夜桜は息をのむほどの美しさだ。手持ち写真の甘さが残念だが三脚を持ち歩くようにはなりたくないと思っている。いつでもコンデジが今の私には合っている。

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2回目の目黒川はちょうど満月だった。手持ち撮影の割にはブレていないかもしれないがかなり霞んではいる。この朧げな感じがサクラにはよく似合う。それにしてもこの日の目黒川はすごい人出だった。老若男女楽しそうに連れ歩いているのを穏やかに眺めていられるのだからおとなになったものだ。

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今年はよく花見に行った。大酒を喰らわなくても花の下で一杯というのは好きだ。酒抜きでは花見とは言えないかもしれないのだがこの目黒川の夜桜は2回とも酒抜きだった。まあひとりだったからというだけのことだがみなが楽しそうに飲み歩いている傍らで写真に徹するというのもときどきはいいかな。

2層の平屋

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横浜国大の後輩の佐野ももさんのcommaの住宅を見学させていただいた。3つの木の軸組+切妻が軸を変えながら連続する平屋。小屋もあらわしなのでロフトがある部分では平屋が重層するから「2層の平屋」なのだそう。軸組を振るという冒険に挑戦した理由が案内文に書かれていて稜線添いの敷地の地勢に素直に従ったことがわかる。細い路がくねくねと上下し周りの家の屋根も向きは等高線に従っている。その環境への納まり具合は十分に納得できる。しかし異なる系の軸組がぶつかる処のディテールは私には落ち着かない。真ん中の軸組が土間を支配していてその空間が外部に繋がっていく感じは好きだ。軒の出には細かい工夫がされていて、意図したことではないのかもしれないが、屋根のたおやかなうねりは魅力的だ。近くに「海軍道路」と呼ばれる広いまっすぐな道路があってこの両側だけは宅地が整然と並んでいて屋根の向きも揃っている。個別にはよさそうな家もあるのだが界隈としての魅力が周りとくらべて明らかに劣る。その落差がこの冒険の引鉄になっているのではとふと思った。写真が諸般の事情でアップできないのでランチの店のかわいい情景を代わりに。私の向かいの席には猫が寝ていてテラスにはキジバトが水を飲みに来ている。「海軍道路」の裏をうねる小路からブリッジを渡ったところ。いい小旅行。

船橋キリスト教会

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室伏次郎/スタジオ・アルテック+ミタリ設計。船橋駅近くにある教会。礼拝堂の光が美しかった。プロテスタントのインマヌエル教会でカトリックよりずっと形式性が抑えられている。だからというわけばかりではないだろうが礼拝堂の空間の軸と祭壇の軸がずれていて俄かに親近感のようなものを覚える。カトリックは苦手だ。まったくの余談だが私の祖父はプロテスタントの牧師だったそうだ。それでもなおキリスト教も苦手だ。線路を挟んで少し離れたところに小さなサテライト教会もある。

戸越銀座駅舎

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洗足池の現場から事務所に戻る時は池上線に乗る。五反田と蒲田を結ぶのどかな路線で同じ東急電鉄でも東横線とはかなり趣が違う。駅舎も古いものが多く柱に木が使われている駅もある。通勤電車というより暮らしの一部という感じでどこか楽しい雰囲気だ。その中の戸越銀座駅は最近新しくなったばかりで屋根を構成する木の架構の柔らかさに目をひかれる。ネットで調べてみたら東大の稲山研究室が基本設計で地元商店街と東急電鉄とタッグを組んで創り上げた駅空間のようだ。こういう地に足が着いた公共建築が増えていくのはいいことだ。

洗足池

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今年は花見がしばしば。元気いっぱいのせいだろうか。2日に千鳥ヶ淵、青山墓地。4日目黒川。6日は朝打合せ前に呑川緑道と洗足池桜山。夜に千鳥ヶ淵ライトアップ。7日は新入生歓迎会の後lunetteの先の古木。8日は不忍池から入谷。写真は6日の桜山。住宅街と池に挟まれた小山が桜で覆われている。鵯がたくさんいる。犬もたくさん通る。

目黒川

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4日の帰りに中目黒で途中下車して目黒川の夜桜。一人だったので飲まなかったのはえらいとも言えるけれどあの盛り上がりのなかで素面はありえないとも言える。今年は久しぶりに新しい仲間が増える。大学の教え子だ。昨晩はlunetteで歓迎会。おいしい日本のワインをたくさん飲んだ。いい夜だった。

半蔵濠

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久しぶりに新卒が入ってきたせいかスタジオが賑やかだ。私にとって初めての窓際席は所内動線の要衝に位置しているおかげで生産性が高いような気がする。下階のサテライトデスクでときどき息抜きをと思っていたがそんな暇が今のところない。今日は朝に佐野ももさんの北鎌倉の住宅を見学。夕方に「家の列島」展レセプション。夜は新人の歓迎会でみんなでlunette。いそがしい。写真は2日の半蔵濠。千鳥ヶ淵の南側は静かだ。

[alley#2]オープンハウス

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2016年に竣工した神宮前の集合住宅 [alley#1]は住宅街の小さな行止まり路地を建築につなげることで街を豊かにする試みでした。奥に続く敷地にもうひとつの集合住宅[alley#2]ができあがって[alley]と名付けた界隈が完結します。4月13日13時〜17時にオープンハウスをします。興味ある方はws@workshop-kino.comにメールをください。ご案内pdfをお送りします。

蛙 狐

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大塚聡さんが「花やしき」近くに設計した「浅草九倶楽部」を体験。「浅草九劇」と[wired hotel]とサロン[zakbaran]からなるエンタテインメント建築。「劇団子供鋸人」のパフォーマンスはこんな機会でもなければ出会うことはなかっただろう。ホテルの客室の一部がドミトリーのようだったり時代の最先端を行っている感じがわかる。居住空間コースのOGに遭遇したのはびっくり。余談かもしれないが事業主のレプロエンターテインメントがかかわるタレントリストは新垣結衣、川島海荷、能年玲奈、清水富美加、吉川ひなの、長谷川京子、など魅力的だ。後に近くの「お多福」に寄れたのはよかった。京都麩屋町で正月に出会ったおでんの対極にある関東風だが雰囲気全体を楽しんだ。写真は「動物集合」から蛙と狐。前者のシルクオーガンディにシルクスクリーンの方法が興味深い。

犬 虎

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4月からスタジオに新人が加わって6人組になるのに合わせて私が席を移動することになった。数年間居座り続けてたくさんのモノが堆積していたので片付けが難儀だった。創造性の入り込む余地がほとんどない片付け作業の手を止める誘惑がモノの中に密かに散らばっているので作業には膨大な時間がかかる。間に合わせなくてはという責任感と情けなくなるような遅滞でストレスの密度が高くなっていく。土日に出てもこのままだと終わらないかもしれないと暗澹とし始めた時に賢い助っ人が現れて作業の監視に来てくれることになった。状況の本質をよく理解しているのだ。おかげで寄り道やつまみ読みがぴたっと止まり急速に片付けが進み、てきぱきと手伝ってくれた上に掃除までしてもらってなんとか新しい席に移ることができた。今までと違って目の前が透明な窓で混沌としたスカイラインの中にはパークハイアットも見える。緑もあって空もあって鳥が飛んでいる。みんながしょっちゅう後ろを通るから周りを散らかしておくわけにはいかない。これはいい席かもしれない。写真は「動物集合」から犬と虎。

猫 犬

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桜が開き始めたので近美工芸館の「動物集合」展がてら千鳥ヶ淵に出かけた。晴れて気温がほどほどに上がって地下鉄九段下駅の階段が渋滞するほどの人出。千鳥ヶ淵は左側通行規制なので北の丸公園は後回しの反時計回りにしたのは正解。ソメイヨシノは満開で華やかなのもいいけれど5分咲きくらいで微かな桜色の点描を枝が透かしている儚い風情もまたいい。混みあっている千鳥ヶ淵からその先に足を伸ばして混みあっているという感じではなくなってきたあたりに工芸館がある。第一日曜日は入館料無料でラッキー。ポスターで知って以来気になっていた「動物集合」は見応えがあった。ほとんどの作品が写真撮影可なのもうれしい。ポスターでもセンターになっている大塚茂吉の「猫」が魅力的。犬も好みだが猫にはかなわないなあ。

火花

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東孝光さん設計の家からもうほんの僅か歩くと井の頭公園の東の端の広場に出る。最近テレビドラマになった「火花」を楽しんでいるのだがこの公園が頻繁に出てくる。犬や娘を連れて十数年間も通ったところには思い出もいっぱいだ。ソメイヨシノが開いてで華やかになる前の春が始まるころもいい。「火花」は原作は未読だが少なくともテレビドラマは佳作だ。主演の林遣都の自然な演技がいい。カメラの回し方や映像に漂っている中央線沿線の匂いは映像としては新しくないかもしれないが私にはこの懐かしさは悪くない。「鞍馬」から始まったブラブラはこの後「サムタイム」につながって大団円。いい一日。

原点

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永いあいだ犬と暮らしていたおかげですっかり散歩が趣味になった。電車や車から離れて街を歩くといろいろと出会うものも多くて楽しい。西荻窪駅前の鞍馬で蕎麦を手繰ったあと井の頭公園までを住宅街をぶらぶら歩いた。一軒家が多い静かなエリアで敷地も細分化されきっておらず建築家住宅も散見される。歩いているうちに40年以上前大学院にいたころに卒業制作の手伝いで一週間ほど泊まり込んだ家があることを思い出して立ち寄ってみた。東孝光さん設計の家が当時と変わらぬ姿でそこに在った。建築を学んでいた学生にとって建築家の設計した住宅を体感するのは貴重な体験でいわば私の建築の原点のような建築である。周りの家は建て替わってはいるのだろうけれどそのあたり一帯の時間が40年前から止まっているかのようにも感じられた。懐かしい出会い。

鞍馬

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蕎麦屋で昼下がりに飲むのが好きだ。最近はちょっと訳があって十割蕎麦に拘っているので西荻の「鞍馬」が多くなる。ここは小さい店だしむちゃくちゃ混んだりはしないし酒もあても気が利いていて好きだ。娘が小学生のころに2人で来たことが2度ある。彼女はここではよく食べたなあ。

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木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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