肥沃の国の境界にて

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瀬川裕美子さんから新作CDが届いた。「肥沃の国の境界にて」副題は〈線・ポリフォニー⇒…! ?〉で興味深い。私もタモリさんと同じ様に周縁部が好きだ。内容は2016年6月のリサイタルと同じでパウル・クレーの詩の朗読まで収められている。40年くらい前に通ったエリック・サティ連続演奏会の高橋悠治、高橋アキ、秋山邦晴を思い出す。ディラン専科の私にはウェーベルンもブーレーズもハンマークラヴィーアも難しいけれど斎藤輝彦さんのリサイタルで出会って以来の縁がうれしい。

arabesque

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くっきりした冬空が続くこの季節の街歩きはいそがしい。樹々から葉が落ちていて鳥たちの挙動が眼を楽しませてくれるからだが、鳥を見失ったあとの枝々もよく見れば味わい深い。自然はよくできていて理にかなった形がそのままで美しいのだ。古のひとびとの自然との交歓のなかから模様が生まれてきたことがわかる。おそらくわれわれの美意識はそういった遺伝子のなかから紡ぎ出されてきているのだろう。

brown-eared bulbul

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鵯の季節なのかな、歩いていると繁く目に飛び込んでくる。こういう風に撮るとギリシャ神話から抜け出してきたようにも見えるが日本以外には珍しいらしく英名brown-eared bulbulはぎこちない。

green on green

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洗足池畔では陽射しを透き込む常緑樹もきれいだ。このただの緑に見える写真のなかほどには鸚哥も写っている。番いでも群れでもないことからしても過日紅梅の中に認めた鸚哥と同じ個体なのかもしれない。こうして環境に溶け込んでしまえば予期せぬことも起きにくいだろう。

return to forever

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打合せ前に少し時間があった日曜日の朝に洗足池を北側から巡ったのは名案だった。さまざまな水鳥の故しれぬ営みをゆっくり眺めることができた。飛んでいる鳥を手持ちカメラにおさめるにはひとしきりの静寂が必要なのだ。この写真とは段違いに躍動感のある美しい写真がジャケットに使われた1972年のアルバムReturn to Foreverには写真そのものの軽快で爽やかな音があふれていた。そのなかでもとりわけ印象的だったChick Coreaが弾くFender Rhodesの響きにこの写真を撮った翌日に出会ったのは何かの縁かもしれない。オペラシティでのピアノトリオに誘われていたのだが知らない演奏家だったのとホールでジャズという取り合わせに馴染めなくて乗り気ではなかったのだが直前になって聴こうと決めた。オペラのホールの地下にあった固定席のない直方体の箱は型を払拭した包容力のある建築。ピアノ仲野真世コントラバス池田芳夫ドラム馬場高望の音楽は豊かで刺激的でじっくり3時間音楽に浸り込んだ。Fender Rhodesにさまざまな鳴り物と弓弾きのコンバスが絡む音世界がとりわけお気に入り。なにごとも先入観で決めつけてはいけないということですね。程近くのlunetteに席が空いていて音楽の余韻を日本のワインに浸す幸せな時間も楽しみました。

find my Tokyo

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土曜は現場打ち合わせが終わった後の昼過ぎから行きそびれていたギャラリーをハシゴした。乃木坂のギャラ間で堀部安嗣展。東陽町のギャラリーA4で中村好文×家具職人コラボレーション展。こういう時に役に立つのがメトロ24時間券。\600で24時間有効なのがうれしい。日曜の昼まで使えるので事務所に出かけるのに渋谷で乗り換えずに副都心線に入り新宿三丁目で寄り道して中野坂上から坂を下った。ただし定期券との併用には改札機が対応しないのが不便。買いだめしてしまった残り2枚の有効期限があるのに写真を撮って気づいてよかった。危うく猫知恵になるところだった。都営地下鉄の\700の一日券はその日限り。ただし限られた土日には\500のワンデーパスがある。メトロに吸収合併されれば便利になるのになあ。

「俺じゃない」

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facebookのともだちつながりは面白い。ともだちの中には欧米のディランファン(英語ではbobcatともいいます)もいてさまざまなボブ情報もアップされる。かなりのフリークでかつ鳥好きのイギリス人がstreet-legal & illegalというグループに誘ってくれたおかげでいくつかボブ情報が飛び込んできた中に驚くようなyoutubeリンクがあった。1964年に発表されたIt Ain’t Me, Babeの2003年シカゴでのライブ音源。ボブが原曲を解体再構築することをよく承知している私が驚く抽象アレンジでほとんどメロディがない。そこにシターンという古楽器による津軽三味線を撥で鳴らしたような伴奏がついているものだからお経のようにも聞こえなくはない不思議な演奏ではまってしまった。youtubeもよくできたもので1曲終わると次におすすめが何曲も並んでいて、その中には同じタイトルの曲もいくつかあるから、さまざまなアレンジ違いをハシゴすることができる。ほぼ同じ歌い方でシターンの入っていない演奏もある。変わり続ける表現者の50年を超す生き様をヴァリエーションの豊富さが語っている。一貫してほとんど変わらない詩の方は、求め縋る恋人への別れともとれるし過剰な思い入れを寄せる信望者への警句ともとれる内容で、スタンザを「俺じゃない俺じゃない」と締める。50年経っても変わらず通用する詩になっている。求められることをやっているだけで自らが変容していかなくては先がないというのはボブ自身の生き方でもある。写真はbobcatならぬ新宿中央公園のボス猫。youtubeへのリンクも貼ってみるのでもし使えたら試聴してみてください。

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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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