勝沼行脚

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photo lower left by ay.

18きっぷは5枚構成なので短い有効期間に1人で使い切るのは難儀だが同行がいれば簡単。水戸の残りは翌日の勝沼行きに充てた。中央線には各停のグリーンがない代わりに「ホリデー快速ビューやまなし」がある。この全車2階建て車両は旅ごころ満載で固定ボックス席なので4人組には最適だ。特急料金なしなので18きっぷと組み合わせると超お得な鉄道旅になる。今回の主眼は建築がきらいと大泣きをしたまま卒業してしまいそうな学生に刺激を埋め込んで送り出すこと。で2010年に竣工した[シャトー・メルシャン]勝沼ワイナリーへの小旅行となった。ただ建築でワインではなく設計した建築を見守り続ける建築家の姿勢を体感させることもある。雲一つなく晴れ渡った勝沼がルンルンと迎えてくれて楽しい一日になった。使われ方は想定の枠をはみ出しながらも成長している。商業施設としてはほぼ定着したと言っていいだろう。左下のバーカウンターの写真は別の学生の撮影。狙いを理解したいい写真だ。件の学生に埋め込まれたタイマーはきっといつか作動する。

偕楽園

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恒例の青春18きっぷで水戸偕楽園へ。録画してあったブラタモリに素直に反応してしまった。2年前の1月にやはり18きっぷで常磐線を北へ走ってフクイチ近くの「現終点」竜田まで日帰りした時に水戸駅の手前で偕楽園の脇を通って鷺が梅林を歩いているのを見て興味は持っていた。臨時停車駅の偕楽園で降りて、ブラタモリで習ったとおり、反対側の表門から入った。確かに薄暗い竹林を抜けてふっと開けたところに優雅な梅の園という流れはいい。鵯、鶫、百舌もそこらじゅうにいる。3層の好文亭に上がると梅林が点描画になっていてその向こうには千波湖も見える。ふらりと来てライトアップも体験できたのは運が良かった。花そのものの美しさは暮れなずむころの灯が一番かもしれない。夜になると偕楽園には列車が止まらないので水戸駅に回った。2年前のとは大違いの楽しい旅だが北のその先の状況はほとんど進展していないのだろう。その状況を知る手段さえ朧げな時世だ。3月11日の朝刊トップは朝日新聞も含めみな「南スーダン撤退」でフクイチは東京新聞だけだったようだ。

オシドリ

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ゴイサギの近くには超望遠レンズを持った鳥おじさんたちがいて遠く対岸を狙っている。オシドリ一家がいると教えてくれたけれど遠すぎて肉眼ではよくわからない。コンデジのファインダーでなんとか確認することはできたけれど遠すぎて写真もおぼろげだ。「洗足池公園で確認された野鳥」一覧にもオシドリの名があるけれど「極稀」とある。サクラ目当てで来たけれど珍鳥二連発で気分は春。
オシドリ鴛鴦Aix galericulataカモ目カモ科。英名mandarin duck。

ゴイサギ

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最近は新宿御苑が好きだ。去年と一昨年は大学の設計演習の敷地を御苑の周縁部に設定したので学生たちとも公園もその周りも何度も訪ねた。私にとって最初はただの広い公園だったのが最近では樹木、植物、花、風景、鳥など興味の対象あふれる豊かな空間になっている。オオカンザクラが満開だと聞いて出かけた日曜日に先ず新宿門近くの池で足が止まった。なんとゴイサギがいたのだ。頭から背にかけての渋い青が美しい。しばらくすると後ろにもう1羽が飛来したが色も模様も違って少し地味だ。雌に違いないと思う間もなく望遠レンズを持った鳥おじさんが仔であることを教えてくれた。ありがたい、がまだ仲間にはならない。
ゴイサギ五位鷺Nycticorax nycticoraxペリカン目サギ科。英名night heron。

Koshu

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もう10年くらい前にメルシャンの勝沼ワイナリーの設計をすることになってそれまで知らなかった日本のワインの魅力に気がついた。その当時はワインバーなどでもまだ馴染は薄く置いてあったとしても価格はかなり高かったので外で国産ワインを開けることは稀だったように記憶している。暫くして「甲州」がワイン用ブドウとして国際的に認められたせいか国産ワインの市場認知度はどんどん高まり始めた。ワインというお酒の魅力の本質は地域性にあるというのが私の解釈で、食べ物は地の旬のものが一番だしそれに合わせる酒も地のものがいいとなるとワインなら地の葡萄品種が合うということになる。とはいえ赤だとマスカットベーリーAはいまいちでブラッククイーンとか甲斐ノワールとかの山葡萄系の今後に期待という状況なので、昔は赤ばかりだった私が白のKoshuを好んで飲むようになってきている。俗に大和撫子と言われるように香りは控えめで仕立て方によってさまざまな個性を垣間見せてくれる味わい深い葡萄だ。写真はメルシャンで記念にいただいた甘めに仕上がった年代物の甲州。明日は今年になって初めての勝沼行き。ワイナリー限定の甲州があったら持ち帰ろう。建築が育っていくさまを体感しに行くのはこの上ない楽しみだ。

Cafune

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スタジオから歩30秒ほどの距離にある方南通りは大江戸線の駅ができてから沿道が急な速度で変わり続けている。コンビニとファストフード店がほぼ出そろい東急ステイができAPAホテルが建設中で、すでに地域性はほとんどない。横断歩道が青に変わるまで90秒もかかる自動車のためのまっすぐな道は人も自転車も忙しそうで味気ないが一歩裏側の街へ入ると路は狭く曲がりくねっていて雰囲気はローカルだ。そんな危うげな界隈にlunetteという小さなワインの店を見つけたのはラッキーだった。ビールはHeartlandでワインは自然派。フランス、イタリア、日本、スペインなどの小さな若いワイナリーのワインはからだに優しい感じ。日替わりの数種類をグラスで飲みかえていく楽しみ方もさることながら名前もエチケットものびのびと自由な若いワインとの出会いは新鮮だった。このエチケットは大阪の島之内醸造所のCafune。ポルトガル語で「愛する人の髪にそっと優しく指を通す仕草」を意味しているのだそう。ラテン語由来の愛あふれることばを見つけてくるセンスが楽しい。岩手産ナイアガラ100%を大阪で醸造。ランチタイムに壜を見ただけなので中身も飲んでみたい。醸造所のある島之内は偶然私が65年前に生まれた処だ。

Entre chien et loup

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lunetteのインスタに載っていたエチケットがあまりにも気に入ったので空壜をもらってきた。「犬と狼の間」という名前もいいなあとワインの素性を調べるためにググってみたらワインより先に「qfwfqの水に流して Una pietra sopra」という文学ブログに行き当たった。entre chien et loupは黄昏時を表すフランス語の慣用表現だそう。おもしろいなあ。ブログに引用されていたローザスコットによる「慣れ親しんでいて心地よいものとよくわからなくて危険なものとの境目」という解釈が絶妙。フランス語ならではのセンスなのかもしれない。そう言えばla chouetteというのもあったなあ。生き物への愛着が深いのかも。そんなに含みのある名前だったのかと飲んでみたくなった。アルザス産でオーセロワ100%珍しい葡萄だ。ちなみにqfwfqは現代イタリアの作家イタロ・カルヴィーノの小説に登場する語り部だそう。そのqfwfq子は「黄昏時というよりも「逢魔が時」といった感覚により近いだろうか」と言っている。何やら奥は深い。

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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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