築地市場雨
もうずっと以前から築地市場に行ってみたいと繰り返し思いながら実現しなかった。移転が決まって強く決心をしながらその移転の延期に救われて安心しているうちに、いよいよ切迫詰まって行くことを決めた日にちが9月15日。なんとマグロ競り見学の最終日だった。前日の毎日新聞に14日の申込行列が記事になっていて、5時開始の受付が2時で120人の定員に達したという。豊洲では階上からガラス越しの見学になるという。14日は近くに宿を取っていたので、並べなくはないが、連れを巻き込んでこういう時間の使い方をしていいものかどうか迷った。中條正義展に顔を出した後とりあえずネットの情報から選んだ手頃そうな鮨屋を目指した。案の定の満席で紹介された格上の系列店におそるおそる入った。丁寧な技が施された握りを堪能して気持ちよく生酛がまわって大将ともことばをかわした。競りの見学のことも聞いてみたが、何も知らない代わりに、すっと入っちゃえばいいよと教えてくれた。10時くらいだったか帰りに行列を確かめに寄ったらもう十数人。並ばない決心ができた。翌朝は精一杯早起きをしたけれども競りが終わる頃に場内へ。想像以上の活気に圧倒された。立って運転する電気運搬車が狭い通路を音も無く猛スピードで走る。パイクも自転車も人も走る。湾曲した平面を待つ独特の上屋が力強い。床仕上げのピンコロが丸くすり減っている。外は雨だ。小さな店が連なる棟違いの長屋群には無数の行列ができている。フレードランナーの世界。永い時が積み重ねられた空間の力が生き生きした魚介類とあいまって高密度の熱気に満ちている。感動した。この時空を棄ててしまうのは無念。カジノなどもってのほかだ。
2018/09/17(Mon) 07:58:11 | doglog