箱根プリンス

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永いあいだ近寄らないようにしていた箱根プリンス(村野藤吾1978)に行ってみることになったのが箱根鉄道の旅のきっかけだった。桃源台港から南に向かう「海賊船」からの遠景に先ず姿が現れる。ジェフリー・バワのカンダラマが湖の対岸に小さく見えてきた時の情景を何故か思い出した。湖畔に並ぶ「龍宮殿」や「山のホテル」は違う。車によるアプローチでは円形平面の宿泊棟は見えない。フロント棟はカンダラマとは違って穏やかでさりげない。山裾と芦ノ湖が出会う淵の中から選び抜かれたのに違いない緩やかに傾斜した敷地に建物はひっそりとおさまっている。フロントと客室棟を結ぶ回廊状のロビーは構成が斬新だと思う。装飾が過剰なところは私のテイストと違うのだが、建築家の強い意志が貫かれた空間には納得させられる。それで朝食はメイン・ダイニングでとることにした。よかった。水際までなだらかに続く木立の中を朝早く歩いた。対岸の風景の中に人工物はひとつもないから見渡す限りが庭のようだ。山並みの向こうには富士がくっきりと在る。鳥の気配が木立に溢れている。やはり私が好きなのはこちらのほうだ。温泉もよかったしいい時間を過ごした。
2017/12/24(Sun) 09:57:27 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
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