沈黙に思う

170214.jpg
「沈黙」は観たくなかった。日経文化面で若松英輔、アーロン・ジェロー、佐藤忠男の評を読んで観る勇気が涌いたような気がして覚悟を決めた。重たくても美しい外海・五島の映像に浸ればよいと考えていたが甘かった。起源が同じキリスト教、イスラム教、ユダヤ教が他の神を認めない一神教であることが世界の諸悪の根源であるというような浅く一面的な宗教感の私にとっては理解し難いことが多すぎる。だから今の私には映画全体についてコメントすることはできないがいくつかの断片的印象だけはここに記しておこう。佐藤の指摘するように農民も代官・役人も生身の人間として描いているところは新鮮だった。役人の言葉の中には野蛮で無知な日本人というよりは意外にしたたかで賢い日本人が見えてくる。布教活動と侵略は表裏一体なのだから狙われる側は手段を選ぶ立場にはない。キリスト教排除、鎖国という非常手段があったからこその国としての延命なのだろう。音楽がほとんどなく代わりに虫、波、風など自然の音が使われていて効果的だと思ったのだがサントラCDも出ているしエンドロールの膨大な文字の中には何故かRobbie Robertsonの名があった。農民役にPANTAの名もあった。沈黙の英訳がsilenceになるところが文化の違いかなとも思う。silenceは静寂や忘却という意味も含んでいる。観終わってワインを飲もうと思うまでに時間が必要だったけれども、とにもかくにも観ることができたのは良かった。写真は遠藤周作記念館からの外海。美しい景色だった。
2017/02/13(Mon) 09:07:55 | doglog
Tittle: Name:

Profile

image
kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

New Entries

Comment

Categories

Archives(4185)

Link

Search

Library