things have changed

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事務所の南東界隈はかつて「十二社」と呼ばれた歓楽街の周縁部でその名残の古い木造家屋が裏街には残っている。飲み屋のカウンターの後ろに密かな階上への階段があるアレだ。お気に入りのランチスポットのひとつ「志奈川」もソレを改装した2階建てで歴史は古い。暖簾の先のガラス戸をがらっと引くと懐かしい木の空間が迎えてくれる。旧いレコードプレーヤをはじめ時の流れをくぐりぬけてきた小物も置かれている。ジャズが控えめに流れ食器はArabiaが中心。そんな雰囲気の時が止まったような空間では私は例外なく独りだが残りの3卓は3、4人組で埋まっていることが多い。彼らの交わす会話はモノトーンに近い空間に溶け込んでいつもは耳に聴こえることはないのだが或る日「だんこう」という言葉に耳を起こされた。初老の紳士がかつて団交の場にいたことがあると淡々と語っているのだ。しかも彼の後ろに重信房子がいたという。10回もパクられたけれど表立たずに密かに生き延びてきた話に年下の男性と女性も平然と相槌を打っている。秋田明大、加藤三兄弟、横浜国大という固有名詞も聞こえてきて久しく無沙汰をしていた過去の記憶がよみがえってきた。できの悪いテレビドラマの場面のようだが時間は50年近く逆戻っていた。あの頃二十歳になる直前にはまだ世の中は騒然としていて当然のことのように自分たちの力で世の中は変わると思っていた。催涙弾を破裂させるための火薬の臭いをいまだに鮮明に覚えている。あの頃があったから今があるのだろう。写真は赤い実に飛び群れるたくさんの鵯。最近は鵯とも仲良しだ。
2017/02/04(Sat) 09:03:58 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
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