ゲーリー展

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立体アートを巨大化したものが建築だと考えている建築家は私は嫌い。アートの内部空間を体験できるのは刺激的かもしれないけれど、その建築を取り巻く都市や自然や文化とのあいだに生ずる不快な軋轢を考えると、建築としては評価できない。床の間に飾れるくらいの大きさの模型にして好事家の資産の一部になるのなら誰にも迷惑がかからないが、経済原則最優先の資本家たちにアイコンとして巧みに利用されて実物大が現実の街に出現するのだから始末に悪い。奇態な外皮の内部が仮に見事に設計された空間であるとしても私は許容できない。そんなに嫌いなゲーリー展に足を運ぶ気になったのは、過日のザハ展で受けた心地よい衝撃のせいかもしれない。成果よりも過程に焦点を置いた展示の内容は見事。展示会の目的は営業と割り切る潔さも見事。模型以外にもさまざまな小技を使い、「ベルニーニとミケランジェロのfoldsの違い」でかっこつけてみたり(ただし、ベルニーニを持ち出すのは昔から猫だましの常套手段)、千両役者ではあります。コンピューターを駆使した設計手法の優位性を高らかに謳い上げるプロモーション・ビデオは圧巻。これが一番の成果でした。あの物理的に不合理な形態に予算的な無駄がないと言い切る勢いはすごい。結局は建築はこういう方向に流れて行くのでしょうか。熱くなりかけていた胸を冷たい風が吹き抜けて行きました。たいへん勉強になったし、行ってよかった。が、ゲーリー作品の評価は微塵も上がりません。写真はalessi社のケトル\74,520。これなら許せる(笑)。
2016/01/28(Thu) 09:56:44 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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