知らない街 続き
昨日のつづき。太田にはプロポーザルの敷地見分を目的に出かけたわけですが、どこに出かけても食べるものにも拘ってしまう私は、真にさえ受けなければ意外に使える食べログ検索で、ランチはとあるうなぎに決めていました。どこの街にだってある寿司もてんぷらもある「うなぎ屋」とは違う専門店のようです。が、廃屋だらけの駅前飲み屋街の一角の廃れる寸前の建物に先ず怯みました。店の前に大書きされた「大正三年カイぎョウ」に気を取り直して暖簾をくぐった瞬間、「しまった!」。さびれた観光地の駅前食堂のような佇まいのうえ、12時だというのに客が一人もいないのです。小上がりで煙草を燻らせていた大将があたたかく迎えてくれて、もう戻るわけにはいきません。腹をくくって、太田に来た理由を話し新しい建築に期待することをうかがうことをきっかけに、同世代の長い話が始まりました。工場で働く教育熱心な親の子供たちが大学まで出してもらって東京に勤めに出て2,3年で戻ってくる町だそう。なるほど、居心地がいいんだ。「図書館?美術館?そんなのもういっぱいあるよ」。「新しいコトが始まるのに立ち会えるのはうれしい」。「俺が求めるのはインターナショナルだな」。お嬢さんは英語学校で出会った先生と国際結婚で今はオーストラリア在住。孫たちと英語で話すのを楽しみに英語を勉強されているそうですが、3・11以降孫たちが日本に来てくれないのが、さみしい。文字に書かれた大きな歴史とは別にそれぞれの小さな歴史がある。建築はそのひとつひとつのためのもの。街歩きの現実に意気消沈していた私に活を入れてくれた貴重な時間でした。捌きたての胆焼き、いけました。蒸さずに焼いた鰻に甘味をおさえたタレ。玉ねぎの入った大ぶりの味噌椀。唐辛子をまぶした木綿豆腐とキャベツなどの素朴な一皿。参りました。三人連れ来客の予告電話が入ったところで、話に区切り。再会を約束して店を後にしました。
I shall return。
2014/02/04(Tue) 07:41:24 | doglog