京町家

近畿の旅16。京都での収穫は町家。油小路仏光寺下ル秦家住宅を見学させていただきました。路に面した連格子と裏庭、坪庭、トオリニワのおかげで、35℃を超す猛暑でも家の中には緩やかな風の動きがあり、仄暗さの視覚効果もあってか、暑さはさほど感じられません。トオリニワは路から続く土間でここには屋根がかかっています。この中間領域が京町家の独特な空間の基幹になっています。面する部屋に応じてミセニワ、ゲンカンニワ、ハシリニワと呼び分けられていることからも役割の大切さがわかります。奥の裏庭には降り蹲(おりつくばい)が設えられていて、お邪魔した日の2日前の集中豪雨もその治水効果でなんとか凌げたとのこと。深さ3m前後の穴を掘り玉石で埋めてあるのだそうです。よく考えられています。心のこもったお話を直接聞かせていただいて、京町家との距離が幾分縮まりました。形だけを残して、例えばお店、シェアハウス、個人の別邸などに中身が変っていってしまう現状を心配されていました。町あってこその町家なのですね。時と共に暮らしが変容していくことは仕方のないことですが、できることならば緩やかな変化を選びたいものです。現在も住まいとして使われていることで、町の暮らしと共に伝え継がれてきたものが、私たちにもよりわかりやすくなっているのだと思いました。日常の暮らしを続けながらそこに見知らぬ客を迎え入れることは難しいことです。その矛盾を乗り越えていくための試みが、頂戴した「秦家便り」やホームページにしっかりと記録されています。また訪ねてみたい家です。
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伊勢神宮から真西に向かう線上にダニ・カラヴァン、室生寺、長谷寺。真北にむかって奈良、京都。刺激的な建築の旅でした。奥は深い。
2013/08/31(Sat) 07:16:49 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
詳しくはworkshop-kino.com

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