土の学校
丹波篠山は河合雅雄さんの「少年動物誌」を映画化した「森の学校」の舞台でもあります。お気に入りのこの映画もあって篠山への思慕を募らせていただけに、鹿や猪が出没する森、登り窯、古民家などを舞台に左官職人・久住章さんの華麗な鏝さばき、という固定概念ができあがってしまっていました。ところが達人の頭の中は、左官の原点としての「土」だけ。素朴な土積みの灰屋を何点も見て回わって、こちらの頭もようやく「土」に切り替わりました。筍、黒豆、ぼたん、蕎麦などで形づくられていた昼食のイメージもご案内いただいた「アッちゃん食堂」でこなごな。地野菜の小皿ではなくカツやカレーやうどんが定食になったどこにでもある定食屋さん。同行の猫おじさんはカレーライスに生卵を二つ落とし、私はうどん定食。きざみよりずっと幅広の揚げにとろろ昆布の入った出汁は納得でした。圧巻は久住さんのご自宅。地面に合わせて傾斜する床には淡路瓦がでこぼこに敷き詰められ、建築を構成するすべての壁面は湾曲していて、やはり土塗り。想像していた左官の粋を凝らした数寄屋とは遠い世界でした。これはこれで貴重な体験。残念ながら写真は非公開です。京都・白河院まで戻ってのスライド・レクチュアには、ペルー、ジェンネ、トゥンブクトゥーまで登場し、圧倒的な「土の学校」を締めくくりました。
2010/08/08(Sun) 07:02:37 | 美しい日本