Forever Young
熱い嵐が過ぎ去りました。ディランの重さを思い知らされるとともに、ひとの縁の愉しさを噛みしめさせてくれる、かけがえのない19日間でした。サービス精神満点の前回の曲球選曲からは一転、最終日は直球勝負でした。アンコール前の固定曲に代わってForever Youngが登場したことと、ついにセカンド・アンコールに応えてくれたことだけを、取るものも取りあえず報告しておきましょう。ディランもライブの成果にご満悦のようすでした。写真は「祭りのあと」。
ライブ盤を出すのならこの日の録音という感じの手堅いセットリストでした。今回のツアーで4回以上登場になる、おそらくバンドとして手応えを感じている曲が並びました。The Levee's Gonna Break、Spirit On The Water、Cold Irons Bound、I Don't Believe You、Desolation Row、Can't Wait。Cold Irons BoundとCan't Waitの重く力強いサウンドは現在のディラン・バンドの持ち味を最大限に発揮した「燻水銀」の演奏です。どれも今年最高の出来と言っていいでしょう。驚いたのは前半唯一の初登場曲My Wife's Hometown。Together Through Lifeに収録されたWillie Dixonのブルースを下敷きにしてどうでもいい詞をとりつけた最近お得意の「クリシェ」が、CD収録曲とは趣がまったく異なるヘビーなブルースに生まれ変わりました。どうにも気になる趣味の悪い詞も、こう表現されればもうどうでもいい。ディラン・バンドの底力に打ちのめされました。最高のノリと裏腹に私がどうにも好きになりきれないのが固定曲として毎回必ず登場したThunder On The MountainとJolene。典型的ロックンロールにどうでもいい詞がつけられたライブ用の曲を要に配して「所詮、音楽は音楽。ノリがすべてさ」を貫いています。私にとっては遥か昔に作られたThe Lonesome Death Of Hattie Carroll 、John Brown、A Hard Rain's A-Gonna Fall、Master's Of War、Desolation Rowなどでのストーリー・テラーとしての歌い手ディランの力量のほうにより感動してしまいますが、そんなことを超えてしまえるところが、ディランの偉大なところなのでしょう。しかし、刻々と姿を変えながら盛り上がっていく演奏に乗せてめくるめくストーリーが語られる最終日のDesolation Rowには鳥肌が立ちました。2008年10月から歌われ続けていた定番のBallad Of A Thin Manに替えて2007年以降4回しか歌われていなかったForever Youngを登場させるサーヴィスは気まぐれディランならでは。そして、ついについに2nd encoreが実現しました。「one more」の大合唱。「ありがとう」の声、声。ディランも人の子、ほんとうにうれしそうでした。古い、新しい、他人の、自分の、に係わりなく、あらゆる音楽を今のかたちで表現することこそが自分の音楽であるというディランの確信がこの感動のフィナーレにつながったのでしょう。
思い残すことはありません。
2010/03/30(Tue) 01:19:20 | Dylan
Re:Forever Young
Simple Twist Of Fateにはおどろきました。めったにやらない曲も同じようにパシっと決まるのだからすごい。曲名が解らないと沽券にかかわるので、聴き取る方も真剣です(笑)。最近のどうでもいい歌詞の曲の峻別が難儀です。28日もよかったですね。「今夜が一番」が毎晩続いているのだからすごい。28日はレアリティ度では確実に一番でした。