川端
居住空間デザインコース京都研修旅行で白河院の大広間で学生たちと飲み明かした翌日は先生たちと徒党を組んで寄り道をして帰京する。今年は琵琶湖西岸をまわって北の方にある高島市針江を訪ねた。この地区は山からの豊富な伏流水が地表面近くを流れていていたるところに水が湧き出ている。地中に管を少し差し込めばどこでも清水が自噴する。街を流れる清流を家に引き込んだ「はた池」を魚や蟹が入り込まないように囲って「つぼ池」としそこに水が自噴する「もと池」を設えてこの地独特の炊事場「川端(かばた)」となる。普通はこれが家の中の土間に続くところにあって「内川端」と呼ばれる。家が取り壊されて屋外になった川端やお地蔵様のための川端は「外川端」。湧水が流れる川には琵琶湖から上って来るコイ、アユ、ヨシノボリ、サワガニなどが棲んでいて、炊事場から出る残り物を分解してくれる。湧水の温度は一定して12℃だから夏はスイカ、ウリ、キュウリ、トマトなどをここで冷やす。街の見学は申込制になっていて私と同年輩のボランティアの案内で街と湖岸を3時間近く歩いた。豆腐屋では川端で冷えた豆腐をいただいた。ガツンとくる木綿だった。2005年にNHKスペシャルで報道されたことで急に来街者が増え、暮らしを守りながら川端を維持していくための自主組織「針江生水の郷委員会」が生まれたのだそう。彼の熱い語りで委員会のさまざまな努力について教わった。飲料水事業などの外部資本に頼らずに自分たちの力で環境を維持して行く試みに拍手を送りたい。針江の町の青田は無農薬で琵琶湖の魚が棲み鳥が群れる。葦が繁る琵琶湖岸も野鳥や川魚にあふれる美しいところだった。
2018/08/16(Thu) 08:00:45 | doglog