house M
松田ナオノリさんのhouse Mで8月12日に開かれた「伝統文化対話シリーズU:軸線と非対称のバランスon axisU 」に参加させていただく機会を得た。house Mは松田さんのご自宅を含む3ユニットからなる重層長屋で西麻布の住宅街に建つ。地下1階から4層分の中庭をロの字に囲みながら3住戸が建築基準法上の共有部分を持たずに空間を共有している。その鮮やかな設計士としての技と四方を囲まれた4層中庭の建築的魅力に惹きつけられて99年に発表された当時懸命に図面を読んだことを覚えていた。だからひょんなことで縁が近づいている室伏さんからのお誘いに即答した。やはり素晴らしい建築だった。図面と写真からは読み切れない発見がたくさんあった。地階のFLと中庭に40cmくらいの段差があって地階の縁に腰かけて中庭を囲むのは新鮮だった。「軸」を主題に室伏さんの「ダイキン・オー・ド・シェル」とランドスケープ・アーキテクトの杉浦榮さんの仕事を手掛かりに対話が進んでいく。日本語の「軸」はかなり多義的な含みの多い言葉で、だから建築家に好んで使われるのだろうが、これをaxisと英訳したとたんに趣きが変わってくる。トムヘネガンが指摘してくれたようにaxisは終点が伴う強い方向を表す。神、権力、ランドマーク、シンボル。「軸」はline、direction、center、stemといったものも含むから「掛け軸」「車軸」もあれば、心も体もマッチも「軸」を持つ。あぶない言葉だということがよくわかった。これは余談だがAxis powersは「枢軸国」だ。対話の後は中庭で中華テーストの菓子と茶。縁に座った参加者がひとしきり語った後、1階に上がって中華テーストの洗練された料理とお酒。いろいろ語り合って稔り多い時間になった。明確な意図を持った空間が生き生きと使われている様を体験した。旧知の田中厚子さんとの再会もうれしかった。
2018/08/15(Wed) 08:00:04 | doglog