水戸逍遥

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VIEWカードにたまったポイントは換金率が高いグリーン券に替えている。このただ同然のグリーン券が18きっぷの旅の強い味方なのだ。各駅の旅で車窓を楽しみながらゆっくり飲んだり食べたりするのは乗り鉄の醍醐味だ。18きっぷの魅力のひとつには行き当たりばったりというのもある。偕楽園でもライトアップが開催中であることがわかったので帰りを遅くして空いた時間に水戸の街をブラブラすることにした。それなら弘道館より芸術館だと思いついて藤森照信展へ。彼のアートは私の考えるアーキテクチュアを逸脱しているので身を固くせざるをえないので勇気をふりしぼっての思いつきだ。私が種苗屋だと思い込んでいた「たねや」が実は菓子屋だったのは学習。その「たねや」製の鳥の工芸菓子が唐突に出現するなど展示自体はアートとしてよくできている。出色は磯崎新による解題「暗号解読の手掛かりは『つくりもの』にある。」。アーキテクチュアを「国家・都市・建築・芸術を貫通する社会的制度」と定義したうえで藤森のモノを「古来日本でいいならわされてきた『つくりもの』」と断じている。みごとだ。その磯崎の設計した器はどうか。恣意性を排除しかつ類例のない形状を持つ塔はランドマークとして完璧だが、彼の言説に育てられて建築の道を歩み続けてきた私にとって芸術館に付与された作為と向き合うのはやはり辛かった。がしかし展示も含めて豊かな時間だったと思う。日没までまだ少し残った時間をどうしようか迷った。東山魁夷は亡き父のお気に入りだったこともあって好みなのだが、同行を巻き込むにはあまりにも個人的なので口にはださなかったが、すっと決まって水戸近代美術館にタクシーをとばした。閉館時刻を過ぎていて犬智慧に終わるところを「東京から来たのなら」と計らってくれて最後の客となった。唐招提寺御影堂障壁画が創り出す空間に圧倒され言葉もなく感動した。墨によるモノトーンの画の技量は衝撃的だ。ここでは言説はいらない。来てよかった。
2017/03/24(Fri) 09:15:01 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
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