「境界の家」

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日大生産工学部卒制審査会から伏見祐介さんの「境界の家」。フクイチ原発災害で移住を余儀なくされた実体験に基づく郡山市街の被災家族用集合住宅。卒論のテーマとした「境界」を手掛かりに個性的な建築にまとめ上げている。アブストラクトから引用すれば「建物の内側へと閉じたものに変わってしまった生活を送る被災者の意識を外に向ける」ことが主題。背景にある事件についても多くを語らず「境界」の出自を解き明かさない淡々としたプレゼンテーションは残念。端正な模型を美しいと感じるだけでなく注意深く読まないと、コモンデッキの2階の境界面が尋常でないことを見落としてしまう。見かけとは裏腹の強烈な建築なのである。私と伊礼先生が持ち点6点の極大4点を投じ、泉先生が感動的な応援コメントをして、なんとか3位に滑り込んだ。建築にも未来がなくはないと思わせてくれる出来事だった。正直に告白すると、最初のエスキスの拙いプランに出会った時にはこういう展開は想像できず、設定から原発移住を外して「境界」に専念することを勧めてしまっている。当人の決意の深さと力量を読み誤っていたのだ。教える者としての未熟さを深く反省している。だからなおさら、うれしい。ありがとう。
2016/02/15(Mon) 10:04:40 | doglog
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kinoshita
木下道郎 ・ 建築家
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