tabula rasa
犬たちとの早朝の散歩の途中に人だかり。新人と思しき女性警察官が道端のうつ伏せの男性に「おとうさん」と声を掛けているのでした。静かな住宅街の道行く人の足下に横たわる意識のない人。不思議な情景でした。食後の静かな朝の音楽は少し冷っとした空気に合わせてArvo PärtのTabula Rasa。LPだとB面全部を占める26分に及ぶ表題曲後半のディミヌエンドに引き込まれました。プリペアードピアノの空の上で鳴っているような音が時折り響くなか、2本のヴァイオリンの奏でる旋律がゆっくりゆっくりと減衰していきます。それまでは気付かなかった中庭の赤い実を啄む鳥たちの囀りが聞こえ始め、その神々しいと言ってもいい音楽と溶け合っているかのように感じられました。音が限りなく小さくなり、ふっと静寂が訪れると、不思議なことに鳥たちの声も暫し無くなりました。音楽に引き込まれているあいだ、私がtabula rasaになって人の気配が無くなっていたのでしょうか。感動的な時間でした。
2013/06/03(Mon) 06:21:02 | doglog