目利き
瀬戸内寂聴の「奇縁まんだら」、今週は小林秀雄。書かれたものを読んだことさえありませんが、近づいてはいけない評論家としておぼろげに私の中に生まれつつあったイメージに、いつもながらの軽妙な筆致で描き出された人間像がぴったりと重なって、まさに膝を叩きました。河豚を食べに行って先ず並んだほかの酒肴に激昂とか所望したブランドと違うブランデーを出されて激怒とかのエピソードは、ただの酒癖が悪いオヤジであれば虫の居所が悪かったといった程度のはなしですが、「目利き」としての大看板を背にした傍若無人だとなると感じが悪いでは済みません。その大看板の裏にある「おれがいいと言えば、その品は、よくなるんだ」を瀬戸内さんが披露してオチにしてくれたおかげで気持ちすっきり読み終えることができました。この手の輩のまわりには近づかないにこしたことはありませんが、出くわしてしまったとしても尻尾は絶対ふらないぞ。写真は新聞を愉しむ私の傍で床暖の温もりをむさぼる動物たちの手、いや足かな。彼らはいつも一点の曇りもなく幸せかな。
2010/02/15(Mon) 07:44:27 | doglog