
桜の頃は風のように去り。散った跡もなかなかの風情。

富士吉田はかつて富士登山信仰を支える宿場町であった。火祭りの舞台となる本町通りには大鳥居があり、富士山に向かって南北に走る通りの両側に「御師」と呼ばれる宿坊が並んでいた。敷地割が東西に細長いのが特徴で通り沿いに石柱が2本門のように立ち、そこから建物までは長い路地となっている。そのかなり特異な敷地割りのまま宿場町としての機能を失った街は社会の変化に適応仕切れずに「廃墟の街」の様相を呈し始めている。何対もの石柱や蔵などが独特の味を醸し出してはいる。時の積み重ねを活かせるかどうかの瀬戸際なのだろう。愛おしい。

新宿御苑の桜は多種多様で開花時期に細やかな差があるので、蕾から満開そして葉桜まで同時に楽しめるのがうれしい。酒類の持ち込みが禁止で「花見」ができないのが幸いして純粋に「桜見」ができる。植物だけでなく庭園の様式も多様で統一感には欠けるが居心地よい都市公園である。桜で賑わう中で若緑の欅も美しい。ここで「桜を見る会」を開いてほしくなかった。