まるがやつ

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上総の旅 7。旅の主題は古民家民宿「まるがやつ」。敷地は大多喜駅から3km。平地一面に広がる水田地帯の北の端にあって背後には柿園と森がある。広大な敷地に建つ元茅葺の古民家を減築修復改装してKAYA、蔵を改装してKURAとしてそれぞれ一棟貸しの宿泊施設としている。居住空間コースの1期生が企画・設計だけではなく経営までしている。行動力に脱帽。担当が18期生の教え子。応援も兼ねてKURAの方に泊まりに行った。こちらは中村好文さん設計で担当は4期生。厚い壁のKURAの中は別世界で深夜に降ったという雨にも気づかずに静かな夜を過ごした。隣のKAYAには6人組の女性陣が泊まりにきていたのだが気配すら感じなかった。中村さんらしい優しい柔らかい空間が、永い時を経た荒々しい空間に抱きかかえられている。ちょっと急な階段を上るのをさりげなく支える握り柱、入口から飛び込む視線を心地よく遮る藁入りアクリル複層板、味噌樽を使ったシャワータブなど技の宝庫。勉強になりました。夜の間接光も美しかったけれど朝の柔らかい自然光も気持ちよかった。いい時間を過ごしました。城下町大多喜も合わせて「まるがやつ」を体験されることをお勧めします。都心からの高速道路の便もいいしドライブでのアクセスが一般的なのだろうが、私は上総の里山を走り抜ける鉄道の旅を強くお勧めする。外房から回って大原の朝市で魚貝海老などを仕入れて来るとさらに楽しいだろう。

大多喜町役場

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上総の旅 6。今井兼次の設計によって1959年に建った大多喜町役場を2011年に千葉学さんが増築している。土曜の夕刻で中には入れなかったし日が落ちかけていた。60年近い歳月を経た建築の荒々しい力強さが街の寂しさも弱々しい光も呑み込んでしまっている。新しくできた建築はその状況に呑み込まれてしまっていると感じた。軸線を強調した増築計画のダイアグラムは明解で力強い。

小江戸大多喜

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上総の旅 5。かつて城下町の中心だった通りには渡辺家住宅、豊乃鶴酒造、大屋旅館など名残がぽつぽつとある。一方建て替えられた末に空き家となった老朽建築も少なくない。新しく建ったものの方が街の寂しさを受け止めにくいようだ。こういう状況での設計は建築家の腕が問われる。難しいがやり甲斐のある仕事だろう。大多喜小学校(1997年)は日大生産工学部の講師仲間の小島広行さん。カーンのバスハウスの面影もあって、並の公立小学校の水準は超えている。遠くに写っているのが大多喜城。

大多喜鉄道館

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上総の旅 4。大多喜は歴史のある城下町。1912年には大原⇔大多喜に人車軌道が開通し1930年に国鉄木原線が大多喜まで開業している。早くから鉄路と縁があったせいかどうか、鉄道模型のジオラマが置かれ鉄道関係の標識などが陳列された「房総中央鉄道館」がある。唐突な踏切標識に誘引されてしまった。模型を運転させてもらえるようで何人かの大人が自らの世界に浸り込んでいた。あぶない。

夷隅鉄道

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上総の旅 3。小湊鐵道の終点上総中野からは「いすみ鉄道」。木更津⇔大原の木原線が未成に終わり国鉄・JRがもてあましていた赤字路線を引き継いだ公営に近い線。ちなみに木更津側はまだ久留米線として残っている。放っておけば廃線になったところを経営努力でなんとか存続に持ち込んだ点は評価できるが、地域とは無縁のグローバルなキャラクターに縋りついたところは私には疑問。城下町大多喜という上総随一と言っていい地域資源を活かし切れていない。車内アナウンスも人気プロによる録音だ。おかげで地域との密着度が小湊鐵道ほどではなくなっていると思う。いすみ鉄道の5.6%の株を持つ小湊鐵道に統合した方が地域のためかもしれない。ともあれ黄色と緑の車輛が里を長閑に走っていく様はいいものだ。

小湊鐵道


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上総の旅 2。「新宿さざなみ」は五井で降りて小湊鐵道に。「トロッコ列車」は鐵道の守備範囲外なので避けようかとは思ったのだが付き合ってくれそうなので挑戦。秋晴れに違いないだろうと窓なしの開放車輛を予約。子連れが大勢を占めている中に独りで乗るとしたらちょっと自意識が昂るおそれもある。蒸気機関車風なのが悲しいところなのだが天気が良かったせいもあって風に吹かれて味わう里の風景は期待以上だった。各駅に停止し通常の半分くらいの速度でしかも地元愛あふれる解説付きだから、地元がよく見える。世界一大きいトイレ、陶芸家が自宅庭につくったミニチュアトロッコ列車、大銀杏など話題にもこと欠かない。合間に上総伝統の「川回し」のことも話す。里見駅ホームでは地元の人たちがお弁当、茸汁、地酒などを売っている。いい地域鉄道だ。

房総特急

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上総の旅 1。えきねっとの35%割を利用して往復とも新宿発着の特急。左の「新宿さざなみ」は257系で「かいじ」と同じ車体とは思えない仕上がり。やはりデザインは重要なのだ。右の「新宿わかしお」は255系。榮久庵憲司のGKのデザインで1993年に房総ビューエクスプレスとして登場している。ここで青と黄の房総カラーが定着したのだろうか。当時の「房総バケーション」という小泉今日子のCMの爽やかさが記憶に残っている。彼女が唄う「しおかぜが〜よんでいる〜」は市販されなかったが今ならyoutubeで聞ける。この頃の時差通勤CM「電車は走る〜」もやはり彼女の唄だった。どちらも好きだった。こういうはなしに深く相槌をうってくれていた太田憲治さんはもういない。

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木下道郎 ・ 建築家
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