
2月に駆け足で通り過ぎた葛西臨海公園「鳥類園」に行ってみた。淡水池のほかに海水と淡水が混ざった汽水池があってその先は海水だから生態系が多様なのだろう。鳥の世界の向こうに谷口さんのドームがしっくりおさまっている。「汽水」というのは馴染の薄い言葉だ。英語ではbrackish。「汽」は「水気を帯びた」という意味を含んでいるそうだ。

はなみぎわ、いい響きだ。川面に散って水際に漂い着いた花のうたかたの姿を今年の桜シリーズの締めにしよう。儚い樹の影も気に入っている。わたしたちの四季に感謝。

なんといっても花には鳥だ。満開の少し手前くらいの花には鳥が群がって蜜を吸っている。手前にある花や枝が焦点合わせの邪魔をするのでうまく撮るのには根気が必要。この日の新宿御苑の桜はヒヨドリがほとんど。しなやかに伸びるからだが美しい。水辺ではゴイサギとカワウに出会えた。そう言えば今度の朝ドラのヒロインはスズメ(鈴愛)だ。

桜の花が舞い落ちるようすを写真に捉えるのは手持ちカメラではむつかしい。小石川植物園で太い桜の木の樹皮を背景にしてなんとかこんな写真が残った。桜はらはらと言えば高校生のころだったかに観ていたく刺激を受けた吉田喜重の「秋津温泉」を思い出す。舞台となっているのは岡山県北部の奥津温泉。少し北に10km行くと地理でウランが採れると覚えさせられた人形峠がある。この鳥取県との県境がこんなに北よりだったとは。東40kmのところの西粟倉は映画「おだやかな革命」で取り上げられていた間伐材の村だ。行きたいところがたくさんあるな。

スタッフの妹さんがfbにアップした木の実たくさんの写真に惹かれて初めての小石川植物園。園内にかなりの高低差があって植生の幅が広いのがいい。桜もちょうど散り頃でいい時間を過ごした。帰りに寄った「シチリア屋」はシェフがミラッツォで修行した本格派家庭料理。1年前の旅の思い出が鮮やかによみがえった。

東急東横線の中目黒駅上りプラットフォーム最前部から撮った目黒川の桜。下界は歩くのに難渋するほどの大賑わいだがここからは咲き誇る花の中心に近いアイレベルで純粋に愛でることができる。ベンチもあって呑めないことはないがみんなスマホをかざしているだけ。警備員の声がけはうるさい。

大学の設計演習課題の敷地を東京の水系沿いから選ぶことにしようと思いついて過日の教室会議で承認を得た。第3クォーターの課題なのだが敷地候補の下見を兼ねて「お花見クルーズ」に参加してみた。日本橋の袂から乗船してうっとおしい高速道路の下を抜けて少し進んで隅田川を下って東に折れると桜の名所大横川。ここからは和船も漕ぎ出ている。常日頃と違った視点から眺める桜を堪能した。都市もいつもとは違う視点で捉えてみると新しい展開が生まれやすいに違いない。