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土地 テロワール 旬


勝沼逍遥。ディナーは「ミルプランタン」を選んだ。設計したワイナリーがオープンする時にお世話になったシェフの店だ。設計監理の仕事の前に事業策定の仕事を受注していて、その段階で営業、宣伝、企画、醸造、資材などメルシャンの多様な社員からなるチームをつくってもらい、私もその一員となってチームとして会社に事業計画案を答申した。ワイナリー事業のすべてを考えるわけだからその中のレストランのメニューにまで首をつっこんだ。ほとんどが醸造の現場の人たちから教わったことがヒントになっているのだが、例えば赤ワイン醸造の時に使う卵の白身のあまりの黄身を使ったカヌレ、葡萄の若葉のフライ、間引かれた青い葡萄の実を絞ってつくるドレッシング、まわりの山にたくさん棲息する鹿料理などなど。採用されたものは実はないのだけれど、その議論の過程の中で「土地の恵み」が大切であることを学んだ。そう言えばワインそのものが「土地の恵み=テロワール」だけから生まれる稀有な酒だ。期待通り「ミルプランタン」のメニューも土地の旬の素材の持ち味を巧みに引き出していた。写真は土地で獲れた野菜をキャセロールで蒸し焼きにしたもの。青紫色のブロッコリーを使うことで見事な彩りの一皿にしたところは技あり。ワインは赤にしたかったのでボルドーの手頃なものにした。日が落ちた後の山ぎわの青が美しかった。駅で燕のつがいに見送られて列車に乗った。幸せでいっぱいでもうワインはほとんど要らなかった。

kinoshita
2018/06/28(Thu) 08:00:09

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