家づくりは住まい手と建築家の共同作業
設計を始める時に先ず住まい手全員の話しをできるだけ聴くようにしています。 できるだけ時間を取って住まいに関係があることもないことも、いろいろな話しを聴きます。もちろん住まいについての要望も書き留めますが、そういったいろいろな情報をいったんバラバラにして客観的に整理します。要望の内容そのものではなく、その背景にある意味を読み取るように努めます。そしてそれらを、敷地の持つ諸条件と合せて組み立てていくのが建築家の仕事です。ある住宅が出来上がった後で、住まい手から「望みどおりの家だけれど、思ってもいないものだった。」と喜んでいただいたことがあります。一番うれしいケースです。住まい手の思いを建築家に伝える事は簡単な作業ではありません。そういった意味で、住宅の設計は住まい手と建築家の、かなり高度な技術を要する、共同作業であると感じています。
住宅に完成はない
住宅は生活のための空間ですから、住まい手の用に応じて機能が固定されがちになるのは当然です。ある時点で住まい手の求める機能を充足する空間ができたとしても、住まい手の家族構成は変っていきますし、住まい手自身の成長や社会・環境の変化に伴って、大前提であったはずの求められる機能は、当然変っていきます。そうしたさまざまの変化におおらかに対応していけることが大切です。間仕切がかわったり、収納が増えたり、そんなことが自在にできる住宅をつくりたいと思っています。中に置かれる家具を限定してしまうような空間より、なんでも許容できる空間のほうが好きです。
地球全体の事も考えていかなくては
近代主義の消費社会から、地域主義の循環型社会にゆっくりとですが変りつつあります。建築材料の選択にあたっても、限られた資源を無駄にしないという心構えが必用です。無駄をなくして、合理的に空間をつくりたいと思います。もちろん子供たちの成長に害がある恐れのあるような建築材料は避けたいと思います。
スケルトンとインフィル
インターネットの驚くほどの進歩で、住まいにおける情報端末や電力供給のあり方はおおきくかわりつつあります。家電自体がインターネットにリンクされつつあります。そのほかでも設備機器は日進月歩です。住宅そのものの耐用年限よりもずっと早い時期に電気・ガス・水道・電話などのインフラや設備機器は更新されます。しっかりしたスケルトンと着脱しやすいインフィルという考え方にたった、将来のことを考えた設計が重要です。住まい手の好みによる調度品、家具などもインフィルと考える事ができます。